海外の土木事業における業績の悪化を受け、大成建設が7期ぶりの最終赤字に陥る見通しだ。9月25日に発表した2009年3月期の業績予想によれば、当期純利益が連結でマイナ130億円、単独ではマイナス90億円になるという。

 同社が海外事業の拡大を打ち出したのは2004年。3カ年の中期経営計画で、当時は年間約1000億円で推移していた海外事業の受注高を2006年度には1500億円に増やす目標を掲げた。

 その後、土木と建築を合わせた海外建設事業の売上高は、2007年3月期に約1900億円に、2008年3月期には同1700億円へと大幅に増えている。2009年3月期は2000億円を超す予定だ。

(注)土木と建築との合計。2009年3月期は予想。同社が2008年5月15日に発表した「平成20年3月期決算短信」から抜粋
(注)土木と建築との合計。2009年3月期は予想。同社が2008年5月15日に発表した「平成20年3月期決算短信」から抜粋

 海外での積極的な事業展開に対し、他の大手建設会社からは「社員をどうやりくりするのか」、「利益が見込めずに撤退するだろう」といった指摘をよく聞いた。

 実際、2009年3月期は最終赤字の見込みだが、就職活動を控えた学生たちの同社に対する見方は、同業他社とは異なる。

 彼らに就職先の希望について尋ねたところ、安定志向から「公務員」と答える学生に交じって、「海外で建設事業に携わりたい」と考える学生が少なくないことにまずは少し驚いた。

 さらに希望する会社名などを聞くと、「海外と言えば、大成でしょ」と答える。同社が海外事業への積極的な展開を打ち出してから4~5年程度だが、学生にはそのイメージがすでに定着しているようだ。

 「海外勤務」だけで、同社を希望しているわけではない。海外事業の拡大が、旧来の体質から抜け出す姿勢の表れと映ったという。

 日経コンストラクションがかつて実施したアンケート調査では、柔軟性のない古い体質が建設産業に対する批判の一因だった。

[調査概要]他産業に従事する人が建設産業や公共事業にどんなイメージを持っているのかを調べるため、日経ビジネス誌の読者2000人を対象として、2004年9月にインターネットによるアンケート調査を実施した。建設産業の従事者を除いた有効回答者数は210人。2000年の調査は同誌の読者700人を対象とした郵送による調査で、有効回答者数は178人。矢印が上向きなのは、2000年の調査に比べてイメージが改善したことを示す
[調査概要]他産業に従事する人が建設産業や公共事業にどんなイメージを持っているのかを調べるため、日経ビジネス誌の読者2000人を対象として、2004年9月にインターネットによるアンケート調査を実施した。建設産業の従事者を除いた有効回答者数は210人。2000年の調査は同誌の読者700人を対象とした郵送による調査で、有効回答者数は178人。矢印が上向きなのは、2000年の調査に比べてイメージが改善したことを示す

 それが、例えば国内から海外へ、公共土木から民間建築へとさらなる競争環境に身を置こうとする企業には、むしろ好感を抱く傾向にある。体質の転換を目指して変わろうとする建設会社を批判する声は聞かれない。

 新しい事業や環境への進出にはリスクを伴うが、この変化への対応力がいずれは業績にも反映するはずだ。