日経アーキテクチュアには、ウェブサイト上でのアンケート調査を基に構成する「建築世論&ランキング」という記事がある。調査対象は、主に「建築関連の職業に就かない普通の人」だ。月1回の隔号連載で巻末にあり、しかもたった1ページなので、存在に気付いていない読者すらいるかもしれない。そんな地味な記事だが、アンケート調査を1年間続けていると発見も多い。そこで、連載が1年を超えた記念の意味も込めて、意外な発見ベスト3を発表したい。

第3位●「日本のアニメーションのテーマパークが欲しい」

 07年7月23日号では、「夏休みに行ってみたいと考えている建物・施設」を尋ねた。集計結果は複数回答で、「遊園地・テーマパーク」が57%、「水族館」が41%、「デパート・ショッピングセンター」が39%と、予想の範囲を超えないものだった。意表を突かれたのは自由記入欄の回答だ。「あったら行ってみたい施設」を尋ねたところ、「大人も子どもも楽しめる場所」といった多数意見に混じって、「日本のアニメーションのテーマパーク」という回答があった。

 「三鷹の森 ジブリ美術館」や「サンリオピューロランド」など、1プロダクション、1メーカーのアニメーション作品やキャラクターを扱うテーマパークは存在するし、人気を博している。しかし、「鉄腕アトム」や「機動戦士ガンダム」、「新世紀エヴァンゲリオン」といった国産人気アニメのキャラクターなどが一堂に会するテーマパークがあるという話は聞いたことがない。キャラクターの版権を持つ企業間の調整などが難しいのだろうが、もし「日本のアニメーションのテーマパーク」があれば、世界中から観光客を集めるのではないだろうか。

第2位●半数を超えた「建築基準法を改正して良かった」

 2008年3月28日号では、07年6月に建築基準法が改正されたことを知っている人に、「建築基準法を改正して良かったと思うか」と尋ねた。その結果、「はい」と回答した人が55%と半数を超えた。もちろん、構造計算書偽造問題で不安に陥った直後の法改正に、普通の人が期待を抱くのも無理はない。それでも、「改悪だ」と主張する人が圧倒的に多い建築界と一般社会との温度差を示す「55%」には、少なからず驚かされた。

 「建基法を改正して良かったと思う理由」については、「建築確認を厳密に行うことで、違法建築を防ぐことができるかもしれないため」といったまっとうな回答が多い。だが、中には「有害物質を使用せず、安心して暮らしていくために建基法改正は必要」といった的外れなものもあった。

第1位●「窓が大きくて困った」「窓が多すぎて困った」

 08年2月25日号では、「住宅購入後、実際に住んでみて気付いた問題点」について尋ねた。「収納が足りない」「思ったより日当たりが悪い」といった定番の問題点に混じって目を引いたのが、窓に関する指摘だ。「小さい」「少ない」ではない。「大きい」「多い」が問題だというのだ。

 「窓は多すぎると家具などを置く場所に困る」「窓面積が大きすぎて、逆に壁が少なく、テレビを壁掛けにできない」「窓を大きくすると外からの視線が気になって、思った以上に開放できない」――。こんな回答があった。もちろん多数ではない。敷地周辺の環境にもよるだろう。しかし、「窓は大きくて多いに越したことはない」と、なんとなく思い込んでいたので、こうした回答は意外な発見だった。

 日経アーキテクチュアでは、記事中で「利用者の声」を紹介するなど、できるだけ“普通の人”の建築に対する意見に耳を傾けるようにしている。そこでは、思いもよらぬ視点や考え方を発見できることがある。“普通の人”へのアンケート調査を続けることで、さらにその意を強くしている。