エコキュートに関する取材を進めていく過程で、薄ら寒い話を耳にした。あるメーカーでは、施工講習会を受けた施工店が手がける工事は3割程度で、残り7割はどのような会社がどのように施工したか把握していないという。「生活に欠かせない給湯設備にトラブルが起きると、建て主に多大な迷惑がかかる。それだけに、きちんとした施工をしてもらいたいのだが…」と、メーカーの担当者は困惑げに打ち明けた。

 家庭用自然冷媒ヒートポンプ給湯機「エコキュート」は、2001年4月に初めて製品化されて以来、出荷台数は右肩上がりに増えている。日本冷凍空調工業会によると、2007年9月には累計出荷台数が100万台を突破した。

 経済産業省資源エネルギー庁は地球環境問題への対応のため、2010年度までにエコキュートを520万台まで普及させる目標を掲げている。、建材・設備ガイドのプロフェッショナル・レビューにも、「建て主からエコキュートの採用を求められる」といった投稿が数多く寄せられている。オール電化住宅の浸透や環境配慮に対する社会的ニーズの高まりなどを受けて、今後、エコキュートの普及が一段と進むことは間違いないだろう。

 市場の拡大が見込めるエコキュートには、様々な業種が参入している。その一方で、施工に必要な資格を持たない作業者が工事を手がけるケースも少なくないようだ。電気と水を扱うエコキュートの施工には、電気工事士と給水装置工事主任技術者の資格が不可欠。さらにガス給湯機を交換するオール電化リフォームでは、内管工事士などの資格も必要になる。こうした資格を持たず、メーカーの施工講習会も受けていない作業者では、建て主は安心して工事を任せることができない。

 冒頭のメーカーからは、水道工事の経験のない電気工事店が水漏れトラブルを起こした事例を聞いた。エコキュートのヒートポンプユニットがエアコンの室外機に似ていることから、作業者がエアコンのガス配管を接続する要領でヒートポンプ配管の工事をしてしまい、配管から湯が漏れ出したという。

 エコキュートは、製品としての歴史が10年にも満たない新しいタイプの設備機器だ。そのため、施工済みのエコキュートに施工ミスや製品トラブルが潜在化している可能性は否定できない。5年後、10年後になってから慌てないために、作業者は施工品質や施工技術の向上に常に取り組んでほしい。メーカーも、トラブル事例の収集・公開を徹底してもらいたい。

 メーカーや電力会社など供給者側は、「エコキュートのある生活」をバラ色に描いてアピールする。それを見た建て主は、夢を抱いてエコキュートの採用に踏み切る。住設機器のなかでも建て主の採用意向が特に高い製品だけに、信用を裏切る行為は絶対にしてはならない。

<訂正>
初出時にオール電化リフォームで必要な資格を「ガス機器設置スペシャリストやガス可とう管接続工事監督者など」と記述しましたが、正しくは「内管工事士など」でした。(2008年9月18日19時30分)