5月12日に、「200年住宅モデル住宅」の第1回の提案募集が締め切られた。まだ、最終的な集計は出ていないが、国土交通省によれば「質問などを含めて新築に偏っている傾向が強い」(住宅局市街地住宅整備室の伊藤明子室長)という状況だ。

 提案募集は、新築だけでなく既存住宅の改修や維持管理・流通システムの整備、技術の検証、情報提供や普及など5分野にわたっており、伊藤さんは「今回のモデル事業は新築だけのために行うわけではありません。新築住宅以外の提案も積極的に募りたい」と話す。しかし応募する側は、既存住宅などでどう対応すればよいか戸惑っている。

 4月の下旬に200年住宅のねらいや反響について伊藤さんに話を聞いて、二つの説明が印象に残った。「200年住宅はハイスペック住宅ではなく、少し頑丈につくり、きちんと手入れして長持ちさせるもの」という話、そして「200年は5~6世代にわたる。必然的に持ち主が変わることを想定する必要がある」という言葉だ。

 前者には「きちんと手入れするための履歴」が、後者には「住宅を流通させる市場の整備」が欠かせない。しかし、それだけでは不十分だ。

 ある工務店の経営者は取材で会うたびに、「新築は高い技術がなくてもできるが、維持管理や増改築はそうはいかない。その場その場の判断、つまり本当の技術力が問われる」と強調する。この見立ては本質を突いていると思う。住宅を長持ちさせようとしたら、履歴などの情報管理システムに加え、その情報を基に現場で判断し、実践する「現場対応力」がより重要になるからだ。

 200年住宅が住宅実務者に問うのは、維持管理や増改築の「現場対応力」や住宅の価値を明示する「目利き」の力と考えておく必要があると思う。

 「所有から利用へ」という言葉をよく聞くようになったが、住宅のつくり手もこの変化を意識せざるをえない。利用するために必要となる「現場対応力」や「目利き」の力は現場経験からしか育めない。家づくりのプロは、自分たちのもつ競争力とは何かを再確認する好機である。