日本弁護士連合会(日弁連)は2008年3月、自治体の入札制度の改革状況をまとめたアンケート調査の結果を公表した。自治体の工事の6割で落札率が90%を超えていると指摘し、落札率の高さと談合の可能性についても言及している。

 この結果を報じた記事には多くの反論が寄せられた。いわく「落札率の高低で議論するのは幼稚」、「低入札をあおるような行為は慎んでほしい」など。落札率の高さを批判することに対して憤りを感じる声が少なくない。

 しかし、「高い落札率=入札改革の遅れ=談合の可能性」といった考えは、「低入札=税金の節約」と同様に、わかりやすいがゆえに一般社会の認識としては珍しくない。

 今も談合は存在するし、それを防ごうと入札制度の見直しも絶えることがない。例えば石川県は2008年3月、談合した際に受注者が支払う違約金を請負金額の3割に引き上げ、談合防止策をさらに強化した。

 一方、福島県は入札の不調や落札率の大幅な下落などを背景に2008年4月、談合防止策を講じながらも以前の指名競争入札を一部で復活させている。

 「ゼネコン汚職事件」や海外からの「外圧」などを機に、一般競争入札が導入されたのが1993年。以来、15年を経ても「談合防止」、「価格」、「品質」の三つの課題がせめぎ合い、入札・契約制度は揺らぎ続けている。総合評価落札方式にしても、評価の不透明さや恣意(しい)性が不信感を招いている。

【調査概要】総合評価落札方式の導入によって入札制度が良くなったかどうかを尋ねた。日経コンストラクションの読者から抽出した810人に、2007年12月から2008年1月にかけてアンケート調査票を送付した。有効回答者数は347人
【調査概要】総合評価落札方式の導入によって入札制度が良くなったかどうかを尋ねた。日経コンストラクションの読者から抽出した810人に、2007年12月から2008年1月にかけてアンケート調査票を送付した。有効回答者数は347人

 では、いっそのこと談合を公認してしまえばどうなるか。ただし、その際の「談合」は以下のような手順で進める。

(1)建設会社が話し合って落札候補者(チャンピオン)と入札価格を決める。
(2)チャンピオンが技術提案と価格の両面で発注者と交渉する。
(3)提案内容や価格、企業の能力などに納得できなければ、発注者はそれらの理由をチャンピオンに伝えて再交渉を求める。
(4)チャンピオンはその時点で交渉権を失い、別の会社が落札候補者となる。

 上記の(1)~(4)を繰り返して落札者を決めるのだが、これらのプロセスをすべて公開するのがポイントだ。その会社をチャンピオンに選んだ理由はもちろん、契約に至るまでの経緯や理由も明らかにする。落札後の設計変更なども逐一、公表する。

 オープンな状態での話し合いや交渉の過程を広く伝えることで、総合評価落札方式の不透明さの改善や下落を続ける予定価格の見直しにつながらないか。

 なにより、一般にはわかりにくい公共事業の入札から契約までのプロセスを公表することで、落札率だけで評価しがちな社会の認識が変わるかもしれない。

 現行の法令や基準、建設産業の慣習などを無視した暴論ではあろうが、「談合の公認」が建設産業の原点や公共事業における契約のあり方を再考するきっかけになればと思う。