2005年の耐震強度偽装事件から2年以上がたつが,2008年に入っても偽装の発覚が後を絶たない。建築の分野で次から次へと現れるこれらの不正から,かつて日経コンストラクションで実施したアンケート調査の結果を思い出した。

 他産業に従事する人が建設産業や公共事業に対してどんなイメージを抱いているのかを知るために,2000年から始めた調査だ。

 例えば,「建設産業は社会資本整備を担う重要な産業だと思う」と答えた人の割合は,2000年に比べて2004年は10ポイント以上,減少した。

 「自分の子供を建設産業で働かせたいと思わない」と回答した人は2000年より増えて,2004年は約8割に上った。そして,「不透明で不公正な部分が多い産業」と思う人は,2000年も2004年も9割以上を占めている。



[アンケート調査の概要] 日経ビジネス誌の読者2000人を対象として,2004年9月にインターネットによるアンケート調査を実施した。建設産業の従事者を除いた有効回答者数は210人。2000年の調査は同誌の読者700人を対象とした郵送による調査で,有効回答者数は178人。
[アンケート調査の概要] 日経ビジネス誌の読者2000人を対象として,2004年9月にインターネットによるアンケート調査を実施した。建設産業の従事者を除いた有効回答者数は210人。2000年の調査は同誌の読者700人を対象とした郵送による調査で,有効回答者数は178人。

 不信感を抱く大きな理由が談合だった。それも,談合した「事実」を単に批判しているわけではない。法令に違反し,国内外から長年にわたって批判され続けながら談合をやめない土木や公共事業の「体質」に,社会が極めて強い不信感を示した。

 翻って,昨今の建築をめぐる偽装事件や施工不良。今後も発覚が続くことになれば,談合への批判と同様,偽装を「やめない」建築の体質が,批判の論点になりかねない。

 いったん失墜したイメージの回復が容易でないことは,大学の土木系学科の入試倍率からも読み取れる。2005年は2割の学科で倍率が1.5倍を下回り, 2007年は定員割れとなった大学が増え,2008年も好転する兆しはみえない。

 「談合などで競争しない古い体質」といった土木に対する悪いイメージが根強く,「学科の名前が土木工学科だったら入学しない」と話す学生さえいる。

 一方,建築学科の入試倍率はまだ,土木ほど落ち込んでいない。しかし,偽装や施工不良などが今後も相次ぐようなら,土木に続いて建築でも希望する学生が減り,人材こそが財産である建設産業全体の根幹を揺るがしかねない。