2007年5月8日付の本コラムで私は、「生産性向上や優秀な人材確保を目的としたオフィス戦略を実践する企業が目立ってきている」と書いた。2007年8月、東京・神宮前の「住友不動産原宿ビル」にオフィスを移転したミクシィも、その1社といえる。同社は、国内最大手のソーシャル・ネットワーキング・サービス「mixi」を運営する企業だ。

 求人情報サイトで創業した同社がmixiを開始したのは2004年2月。2007年5月にmixiのユーザー数は1000万人を超えた。これに伴って、2004年3月期に約3億円だった売上高は、2007年3月期に52億円になった。その間、東京証券取引所のマザーズに株式上場もしている。

 オフィス移転の背景には、JR渋谷駅付近の旧オフィスが手狭になっただけでなく、こうした急激な事業拡大に伴う人材確保が同社の重要課題になったことがある。サービス企画やシステム開発のスタッフを増やす考えだ。

 オフィス移転に当たっては、リクルート効果も意識して立地や眺望の良いビルを選んだ。内装には、色調を3系統に分けた用途別の会議室のほか、ビリヤード台やゲーム機を設置したコラボレーションスペースなど、「ここで働いてみたい」と思わせる工夫を施している(文末の関連記事を参照)。

 人材確保のためにミクシィが講じた施策は、オフィス移転だけでない。2007年10月、それまで経営企画室が所管していた人事機能を独立させて人事部を新設。人事部が総務機能も担うことになった。

 人事部長に就任した大場伸城チーフビジョンエヴァンジェリストは、「人材採用のほか、人に関連する環境づくり、制度づくりなどワークスタイル全般をデザインしていく」と同部のミッションを語る。

 「組織は戦略に従う」とは、米国の経営史学者のアルフレッド・チャンドラーが残した有名な言葉だ。立案した戦略に従って、組織を編成することを示す。ミクシィが実行した組織再編やオフィス移転も同社の戦略に沿ったもの。取り組みの成否は、優秀な人材を確保し、うまく動機付けられるかにかかっている。