「オフィスで使うコートハンガーには、特に個性がなく積極的に買いたいと思える製品が少ない。既存製品の売上が落ちる前に、新製品を開発する必要がある」。ライオン事務器で新製品開発を手がける遠藤浩氏は、そんな問題意識を抱いた。

 遠藤氏がコートハンガーの市場を調べたところ、服を掛けられるという機能だけでなく、デザイン性が求められていた。さらに、ホワイトやシルバー、ブラックの色をした製品のニーズがあることも分かった。ただし、製品の質感と価格のバランスに対して顧客の目が厳しくなってきている。安っぽい物を作っても受け入れられない。

 こうした観点から開発したコートハンガーが、同社が2008年1月に発売する「STL-12」と「STL-06」だ(下の写真を参照)。横から見るとL字型のユニークな形状をしている。デザイン上の工夫だけではない。合計で30kgまで洋服を掛けられるようにした。ほかにも、脚部にスリット棚を取り付けて構造を補強した。棚には、合計で20kgまでの荷物が置ける。色はシルバーのみ。STL-12が幅120cm、STL-06が同60cmだ。

 どうやってこの製品をデザインしたのだろうか。遠藤氏は「実はオフィスで見慣れたまったく別の製品が開発のヒントとなった」と明かす。それは同社製の新聞架だ。「新聞架を大きくすれば、デザインに優れたコートハンガーが作れるのではないかと思い付いた。新聞架の生産工程の一部を転用でき、コストが低く抑えられることから開発がスタートした」(同氏)。ただし、新聞架をそのまま拡大したわけではなく、スチール製の角パイプの厚さを20mmから25mmに増すなどして、剛性を確保している。

 生産工程の新規立ち上げや部材調達が壁となって、新製品を臨機応変に開発できないことがあると聞く。新製品を開発するときは、異なる分野の製品にも目を配るとよさそうだ。

左は2008年1月に発売するコートハンガー「STL-12」。価格は3万6750円だ。右は開発のきっかけとなった新聞架(写真:ライオン事務器)
左は2008年1月に発売するコートハンガー「STL-12」。価格は3万6750円だ。右は開発のきっかけとなった新聞架(写真:ライオン事務器)