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ケンセツ的視点

「不都合な真実」に土木広報を学ぶ

2007/11/19

 2007年のノーベル平和賞の受賞者が10月,米国のアル・ゴア元副大統領らに決まった。環境問題に取り組む氏の活動が認められたわけだが,その活動を描いた映画「不都合な真実」が受賞に与えた影響も,無視できない。

 この映画は,アル・ゴア氏の講演の様子を中心に氏の生い立ちなども交え,地球温暖化の影響が各地で現れている実態をドキュメンタリーで伝えている。

 特筆すべきは,講演でのプレゼンテーションの秀逸さだ。気象データや写真,映像を数多く使いながら,人々が漠然と理解している地球温暖化などの問題をわかりやすく説明し,現実の問題として実感させる。

 日本の公共事業や土木の広報を考えるうえで,この実態や事実の示し方に学ぶべき点は多い。公共事業への理解を得るために,日本でも例えば交通量のデータなどを基に道路整備の必要性を示し,水害などの写真でダムの大切さを訴えてきた。

 データや写真といった扱うものはゴア氏の講演と似ているが,インフラの実態が社会や市民に十分に伝わっているとは言い難い。

 その理由の一つとして,かつて日経コンストラクションのインタビューで,宮城大学事業構想学部教授(当時)の久恒啓一氏は次のように指摘している。

 「いまの行政は『説得型行政』なんです。たくさん準備して,きちんとしたデータを出す。文句を言われたときのために想定問答集も作っておく。しかし,人間は説得されるのは嫌いです」。

 ゴア氏の講演は,周囲を説得しようとするよりむしろ,人々に自身の問題として納得させる内容になっている。いたずらに不安感をあおったり,利便性を強調したりするだけでは「納得」は得られない。

 米国土木学会は,公共投資への理解を求めるために市民にインフラの実態を発信し続けている。自主的に「インフラリポートカード」を作成し,インフラの“成績”を市民に公表している。

 公共投資をさらに減らすにしても,まずはその実態を社会が十分に認識したうで,判断すべきではないか。例えば維持管理の問題について,建設産業の従事者と市民とではとらえ方が大きく異なる。

●これから必要性が増す公共事業は?

【調査概要】
「市民1000人調査」は2006年8月25日から28日にかけて全国の20歳から59歳までの男女に実施。回答者数は1000人。「建設実務者調査」は日経コンストラクションの読者のうち,7016人に対して実施。562件の回答を得た。
【調査概要】
「市民1000人調査」は2006年8月25日から28日にかけて全国の20歳から59歳までの男女に実施。回答者数は1000人。「建設実務者調査」は日経コンストラクションの読者のうち,7016人に対して実施。562件の回答を得た。

 折しも今年は,鋼橋のトラス部材の破断など,各地で日本のインフラが抱える課題の一端が明らかになった。道路陥没や法面の崩落なども含めてインフラの劣化が懸念されている。

 不謹慎かもしれないが,プレゼンテーションの“題材”は豊富だ。この実態を「不都合な真実」として社会や市民が理解し,「納得」を得られるか否か--。土木広報のあり方が問われている。

西村 隆司日経コンストラクション

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