総合評価落札方式やプロポーザル方式において,成績評定点は受注者を選ぶ際に各社の技術力を示す項目として取り入れられている。成績評定とは,公共事業の発注者が建設会社や建設コンサルタント会社の作業内容を評価する仕組みだ。建設工事でも,建設コンサルタント業務でも,いま手がけている仕事が次の受注に影響することを意識して取り組む技術者は多い。当然,自分たちの仕事につけられる点数の根拠も気になるところだ。

 国土交通省の成績評定では,評価基準を示した表などをホームページで見ることができる。しかし,建設会社などに話を聞いてみると,具体的に何が評価されたのかがわからないことがよくあるという。そのためか,「どこで点をもらえるのかわからないので,検査の際に発注者に見せる資料には,取りあえずアピールできそうなポイントを何でも盛り込んでおく」といったスタンスのところもある。

 「より高い点を目指そうとすれば,それ相応の努力をすることになる。コストがかかることもあるが,それは我々の持ち出しだ」。ある建設会社の社員は,複雑な心境をこう続ける。「発注者に表彰されるほどの高い評定点を取ったものの,利益の出なかった現場もある。点数を重視しすぎることは,利益を追求する企業としてどうなのかという思いもある」。

 評価を得ようと努力することにかかるコストは,次の受注機会を有利にするための一種の営業費のようなものと割り切っている会社もある。しかし,このことがエスカレートすれば,より高い評定点をねらうために必要以上にコストや手間をかけるような傾向が強まる可能性もある。

 日経コンストラクションで,主要な建設会社30社と建設コンサルタント会社30社に対し,アンケート調査を実施したところ,成績評定の点数だけでなく,その根拠となる具体的な評価内容を通知してほしいという意見が多く寄せられた(回答数は建設会社20社,建設コンサルタント会社21社)。この背景には,評価のポイントを知ることで,余計な努力をせずに,必要なところにエネルギーを注ぎたいという思いもあるようだ。