福田康夫新首相が総裁選挙の演説で触れたことなどで脚光を浴びる「200年住宅」。福田首相は総裁選挙の演説で「この200年住宅というのは、いま現在たった30年しかもたないという無駄遣いをやめて、欧米並みに50年、70年、80年というように寿命を長くしていく。そのことによって資源を節約し、そこから出てくる廃材を少なくする。環境のためにそういうことをしていく」と語った。

 その福田首相が衆院本会議で所信表明演説を行っていた10月1日の午後、われわれは三澤千代治氏が話す200年住宅「HABITA」(ハビタ)の事業構想に耳を傾けていた。手塚治虫の未来漫画に出てきそうなHABITAとは、元ミサワホーム社長の三澤千代治氏が提唱する集成材による大断面木構造住宅。原価公開、価格明解な住まいづくりなどの新しいビジネスモデルを展開して、長期耐用の200年住宅の実現を目指すという。

 そもそも、眉につばを塗って話を聞いているから、こちらは意地の悪い質問をする。「200年もっても住み続けられるのですか?」「原価公開はほかの産業でもうまくいっていないけれど成算はあるのですか?」--。日本庭園に面した帝国ホテルの小さな部屋で、三澤氏はムキになるでもなく、こちらの質問に対してとつとつと思いを語る。なんとなく肩透かしを食ったような印象。「世の中のすべてのことは、やってみなければわからんでしょう」くらいの感じで、肩に力が入っていない。

 桂離宮から、集成材の接着剤まで話が広がるなかで印象的だったのは、1967年にミサワホームを立ち上げた創業者の三澤千代治氏が、「時代に合わなくなった」の一言で、従来のプレハブメーカーのビジネスモデルを明確に否定していたことだ。「ハウスメーカーの商売は、原価50に対して一般管理費が50かかっている。セールスマンは何もつくらず、総合展示場も生産には寄与しない。だから壁にぶつかっている。環境の時代にも合わない」。

 あれこれ質問をすると、細かな点には矛盾も残り、事業の細部はまだ練り上げられていない印象を受けた。しかし、三澤氏の話しぶりは自信に満ちている。なぜだろうと思いながら聞いていると興味深い話がでてきた。数年前から、三澤氏は築300年以上の古い住宅340件をリストアップし、自身がそのうち100件を見て回ったのだという。それが「木構造による200年住宅の可能性は歴史が実証している」という自信につながっているようだ。

 この話には納得しつつ好奇心をかきたてられた。興味があるのは、建物そのものよりもむしろ、それらの住宅を300年以上にわたって「保って」きた住まい手の意識・動機と手入れの仕組みだ。耐久性という面からみれば、200年もつ住宅をつくることは可能だろう。問題は数世代、あるいは数家族が住み継げるかどうか。特に家督を継ぐという仕組みが薄れている都市部の住宅で今後、可能かどうか。国土交通省は来年度予算で200年住宅に約100億円を要求した。使うのであれば、家を住み継ぐサポートシステムに焦点を絞り込んで使ってほしい。