米国資本によるカジノリゾート開発が進むマカオを訪れた。マカオは中国広東省の南方に位置する特別行政区。中国での個人旅行の解禁やマカオへの外資参入の認可を背景に、カジノの売上高が2006年に約70億ドルとなり、米国ラスベガスを抜いて世界第1位となったことは記憶に新しい。2006年にマカオを訪れた観光客は2200万人。このうち、中国本土からが55%、香港からが32%を占めている。
 
 開発が進むのは、マカオのタイパ島とコロアネ島の間を埋め立てたコタイ地区。六本木ヒルズの開発面積の7倍を超える約80ヘクタールの広さだ。この地区で、米ラスベガス・サンズ社は「コタイストリップ」と呼ぶカジノリゾートが立ち並ぶエリアを開発するプロジェクトを進めている。「シャングリ・ラ」や「シェラトン」、「セント・レジス」などのホテルが2008年以降、順次開業する計画だ。

 同プロジェクトの一環でサンズは2007年8月28日、コタイ地区に「ベネチアン・マカオ・リゾートホテル」を開業した。スイートルーム仕様の3000の客室、350店舗が出店する9万m2のショッピングゾーン、世界最大級となる5万1000m2のカジノスペース、1万5000席のスタジアムを擁する10万m2のコンベンションスペースなどを備える巨大な多目的施設だ。同ホテルの建設にサンズは24億ドルを投じた。開業後、1週間以内で来訪者は延べ50万人を超え、好調に滑り出した。

 ベネチアン・マカオには、米国ラスベガスの「ベネチアン・カジノ・リゾートホテル」と同じく、サンマルコ広場やカンパニーレ・タワーなど、ベニスのランドマークを模倣した施設があるほか、館内にはゴンドラで周遊できる“運河”がある。カジノや飲食、ショッピングだけでなく、ライブやショーなどのエンターテインメントも催される。ホテル内に設けられた“街”に1日中、滞在する観光スタイルが定着する可能性がある。

 これまでマカオの大型カジノリゾートは、「リスボア」や「ウィン・マカオ」など、マカオ半島に集中していた。コタイストリップ・プロジェクトの影響で、観光客の宿泊先がコタイ地区へとシフトし、消費行動がホテル滞在型に変わるとすると、現地の観光産業に少なからず影響を与えそうだ。一方、地元紙には、カジノとコンベンション施設を一つの施設に取り込んだベネチアン・マカオのモデルが、地域経済の拡大に貢献するとみる学識者の意見が掲載された。

 ただし、同ホテルのオープン当初、館内施設について熟知していないスタッフが少なくなかったことは気になるところだ。カジノリゾートを真に成功させるためには、施設を運営するスタッフに十分な教育訓練を施すなど、ソフト面の施策と両輪で回していく必要がありそうだ。

ベネチアン・マカオ・リゾートホテルの外観。深夜もひっきりなしに各地からのシャトルバスが訪れる(写真:KEN-Platz )
ベネチアン・マカオ・リゾートホテルの外観。深夜もひっきりなしに各地からのシャトルバスが訪れる(写真:KEN-Platz )

ベネチアン・マカオのカジノスペースの一部を見下ろす(写真:KEN-Platz )
ベネチアン・マカオのカジノスペースの一部を見下ろす(写真:KEN-Platz )