「“現場力”を高めたい」。ある建設会社の幹部は,自社の取り組みの一つに現場での技術力向上を挙げる。

 その幹部はこう説明する。「大手の建設会社は,準大手・中堅の建設会社と比べて,技術の支援体制やスタッフの数などの面で圧倒的な優位に立つ。しかし,ある一つの現場に限ってみれば,現場事務所に投入できる元請けの人数は,大手も準大手・中堅もそれほど変わらない」。頭数が同じであれば,十分に勝負できるという考えだ。工事の成績評定で高得点を取ることができれば,後に続く入札に有利になるとみる。

 「工学博士取得を支援していきたい」。こう話すのは,海外での受注実績も多い建設会社の幹部だ。この幹部は,過去の経験から次のように続ける。「日本国内では技術士が一つのステータスだが,海外では“ドクター”を持っていると交渉時などに有利に働く」。技術力をアピールする戦略として資格者を増やすことを掲げる会社はあるが,海外の仕事を視野に工学博士の取得を支援するという考えはユニークに映った。

 談合事件の発覚により,長期にわたる指名停止などで受注に影響が出ている両社。これだけ痛い目にあったのだから,もう本当に“話し合い”はない――。両社のほか複数の建設会社の幹部から,このような話を聞いた。脱談合後の新しい秩序下での厳しい競争を生き抜くためには,技術力の向上こそが重要であると,各社が本腰を入れ始めている。