相変わらず暑い日が続くものの、日中以外は過ごしやすくなってきた。毎年この時期に思うのは「オフィスの窓を開けることができれば、冷房の使用を控えられるのに」ということ。日没後は空調を効かせた室内より屋外の方が涼しいことも多く、自然換気できない建物の設計に疑問を抱くようになった。

 近年、窓が開かないオフィスビルが増えている気がする。はやりの超高層では窓が開くビルはほとんどない。窓が開かないようにしておけば、室内の温度や気流の速度を設計上コントロールしやすくなり、突風が書類を吹き飛ばすといったトラブルも防げる。窓が開かないことは、設計者にとっても利用者にとっても一定の合理性がある。発注者や管理者も、そうした使い勝手の良いオフィスを求めている。

 しかし今日では、地球の温暖化防止が声高に叫ばれている。外気は涼しいのに窓が開かないから冷房を運転せざるを得ないといったオフィスビルは、極力なくしていく必要があると思う。

 そのために、建築界が果たす役割は大きい。窓が開けられるようになると、ふだん気付かない不都合がいろいろ生じるが、利用者がそれを許容しないことには窓開けによる省エネは実現しない。利用者が許容しないビルは、発注者が建てようとしない。窓が開くビルを増やすには、オフィスビルにかかわるすべての人が自然換気の意義などを理解し、行動に移す必要がある。それには、設計者による論理的な情報発信が欠かせない。

 行政に対しても設計者が積極的に意見する必要がある。例えばビル衛生管理法は、快適なオフィス環境を維持するのに不可欠であるものの、同時に、窓が開かないビルを増やす要因にもなっている。昨今の省エネの流れに合致した法令はどうあるべきか、建築界から意見することが重要だ。

 暑ければ窓を開けて、心地よい風を建物内に通す――。こんなシンプルな行動で地球の温暖化を食い止められるのならば、今すぐにでも取り組みを始める必要があると思う。