国土交通省は8月15日、「建築主の皆様へ~6月20日から建築確認・検査の手続きが変わりました~」という全1ページの文書をウェブサイトで公開した。「建築主の皆様へのお願い」として、確認申請前の設計者との綿密な打ち合わせ、余裕のあるスケジュールの設定などを列挙。設計変更は軽微なもの以外、計画変更の手続きを必要とすることを理由に、確認申請の段階で設計内容を十分に詰めておくことなども建築主に要請している。

 日経アーキテクチュア、日経ホームビルダー、KEN-Platz(ケンプラッツ)からなる改正建築基準法取材班は、施行から1カ月後の改正法に関する緊急実態調査の結果を、8回にわたってKEN-Platzで報じた。改正法は確認申請の手続きを長期化し、確認後の設計変更を簡単にはできないようにした。それだけに、調査対象の建築実務者からは、建築主を含む一般社会に改正内容を広く告知するよう国交省に求める回答が数多く寄せられた。

 同省が15日に公開した文書は、こうした声に応えるものと見なすことができる。それにしても8月15日といえば、改正法の施行から約2カ月も後だ。なぜこの時期に、という疑問は残る。

 担当者である建築指導課の安藤恒次企画専門官は、「これ以前にも、改正法の内容を建築関係者だけでなく、経済団体や不動産の業界団体にも説明してきた。新聞でも告知した」と補足する。そのうえで、「ただ本来、建築主に対しては、国交省よりも直接、顔を合わせる建築士に説明してもらうほうがよい」と話す。

 いまになって、ウェブ上で建築主向けの告知を始めた理由を、安藤企画専門官は次のように語る。「改正法の施行後、建築確認の現場で手続きの滞りが生じており、その一因が改正法に対する建築主の理解不足だという建築業界からの声があるからだ」。「建築士だけの説明で、法改正による確認審査の厳格化を建築主に納得させるのは、立場上、難しい面もあるだろう」と、建築主から見れば受注者になる建築士の立場への理解も示す。「改正法を運用する特定行政庁や指定確認検査機関と、設計変更などを求める建築主との間で板挟みになって、苦労している建築士もいるのだろう」とも話した。

 施行直後の6月22日の時点では、「まじめに仕事をしてきた一級建築士なら、改正建基法が仕事に与える影響はさほどないはずだ」と話す国交省建築指導課の職員もいた。それから約2カ月、混乱する現状をみて、同課も以前より柔軟な姿勢で改正法の普及に取り組もうとしているのだろうか。