日経アーキテクチュアは「第5回 日経アーキテクチュアコンペ」を開催します。課題設定や審査基準の切り口を鮮明にするため、これまでの本誌コンペと同様に審査員は一人。今回の審査員は建築家の長谷川逸子氏です。

課題「ハイテクの先に見える詩的風景」
審査員:長谷川 逸子氏(建築家、長谷川逸子・建築計画工房代表)
作品応募期間:2007年9月3日~10月16日必着


 ハイテクノロジーは均質で薄っぺらな建築をつくり続ける方向に流れていて、かつて建築が人々を引きつけるポエティックシーンでもあったことを、既に失ってしまっている。このごろの海外のコンペの審査で「日本のハイテクノロジー建築はインターナショナルスタイルの終点にあり、日本建築としての魅力を失っている」と指摘を受ける。
 コンピューターテクノロジーの向こうに新しい地平を開き、人々の日常生活をもっと生き生きとさせるような建築風景づくりに、改めて向かう時ではないだろうか。私は建築には本来そうした力があると信じている。
 経済活動をスタートさせているインドや中国などアジアの若い建築家たちの仕事に、過ぎし時間を持続させながらも今日性をうたい上げている詩的建築を感じる。見えにくくなってしまった日本的なるものも現代の目で改めて見ることによって、人々の生活ともっとかかわりを深められる詩的風景を立ち上げられるのではないだろうか。

【応募者への期待】
 建築は単体では成立していない。地域の環境と共にあり、敷地全体をデザインすることで周辺と呼応し、活性化するコミュニケーションを発している。  住宅地を散策していると、建築のありようだけでなく、生け垣やフェンス、オープンガーデンがよく考えられている日本的風景を見て癒やされ、すだれのすき間からは畳の上で気持ちよく昼寝する人が見受けられたりする。東京の下町の建築は開口が大きく生活が丸見えのうえ、外の植木鉢の横では老人たちが縁台に座っておしゃべりをしていて、共に生きているというイメージを見せてくれる。  しかし一方で、そうした都市の表側には、規格化された既製品パネルの壁でつくったドライな建築群や看板があふれ、今日では次第にコンピューターの中の3Dがそのまま立ち上がったようなハイテク建築も混ざりだして、ますます身体感覚になじまない都市環境になっている。  私は大規模な公共建築を設計するに当たって、初めの藤沢市湘南台文化センターからずっと「ランドスケープアーキテクチャー」というテーマで設計をしてきた。つまり自然/建築、ソフト/ハード、開く/閉じるという二つの対比的な考えをやめて、それらを一体的にとらえる。抽象的なことと具体的なことを同じレベルに置くことによってインクルーシブな場を切り開きたいと願ってきた。そうすることで、社会の変化だけでなく、自然の絶え間ない移り変わりや、人々の流動する知性も含めて思考し、建築という言語を生き生きとした空間の設計に結びつけてゆくことが可能だと考えてきた。  このごろ見たジャン・ヌーベルによるエッフェル塔の下の「ケ・ブランリー美術館」は、敷地全体を1階の高さのガラスで囲い込み、その内側を野原のような植物で覆っていて、その上に建築が浮かんでいる。これは私がイメージするランドスケープアーキテクチャーのひとつの形として見えて面白かった。  ランドスケープアーキテクチャーというテーマを考えるためには、水や霧、風や空気、光や緑を融合し、植物、土や石、しっくいなどナチュラルでクリーンな素材を導入し、さらには省エネを考慮して設計する。そうすることで建築を都市と結びつけ、振る舞いの快適な状態をつくるポエティックマシーンが実現する。このコンペでは新しいランドスケープアーキテクチャーを期待している。小さい建築への期待もあり都市レベルの期待もあり、提案に規模の大小は問わない。

長谷川 逸子

●賞および賞金:
総額200万円(入選点数と賞金の内訳は、審査後に審査員の長谷川逸子氏が決定)。
●応募資格:
どなたでも参加できます。応募者はグループ・個人を問いません。応募できる作品数は、応募者1人につき1作品とします。
●入賞者への結果通知:
11月上旬を予定しています。
●入選作品発表:
日経アーキテクチュア2007年12月24日号、日経BP社の建設・不動産専門情報サイト「KEN-Platz」ほか

≪20歳代の応募者に「立原道造賞」≫
2005年から、立原道造記念館(東京都文京区)の協力のもと、「立原道造賞」を併設しました。「才気あふれる作品を提出した20歳代の応募者に与える最高賞」として、コンペの最優秀賞と同額の賞金を受賞者に授与します。詩人として活躍し、24歳の若さで他界した立原道造は、「建築家」としても将来を嘱望されていました。感性が光る応募者に、故人にちなんだ同賞を贈ります。

立原道造(たちはら みちぞう)
1914年(大正3年)東京・日本橋に生まれる。34年東京帝国大学工学部建築学科入学。堀辰雄が主な主宰者であった『四季』(第二次)の編集同人となる。以後晩年まで、『四季』を主な舞台として、ソネット(14行詩)詩人として活躍。37年東大卒業、石本建築事務所に入社。38年夏、肺尖カタルのため休職。39年第一回中原中也賞受賞。3月29日、病状急変し、永眠。享年24歳

【応募方法】
応募期間内に作品を下記の送付先へお送りください。作品提出に当たっては、専用の応募シートに必要事項をすべて記入のうえ、同封してください。

■応募シート:
下記「個人情報取得に関するご説明」をよくお読みいただき、同意のうえ、下のボタンから応募シートをダウンロードしてください。

  • 「個人情報取得に関するご説明」に同意のうえ応募シートをダウンロード(PDF形式)

  • ※公正な審査の妨げになる場合があるので、応募者の氏名などは作品には記入しないでください。
    ※応募シートにご記入いただいた住所やE-Mailアドレスなどは、日経BP社からの事務連絡に使わせていただきます。なお、これ以外に日経BP社および日経BPグループ会社から、各種ご案内(刊行物、展示会、セミナーなど)やアンケート、出展社・広告主などの製品やサービスのご案内をさせていただく場合があります。また、本コンペの審査過程で、ご登録いただいた所属先や年齢などを審査員に開示させていただきます。

    ■応募作品の形式:
    A2用紙(420mm×594mm)1枚にまとめてください。表現方法は提案内容に即した表現で自由に行ってください。模型および立体の応募は受け付けません。

    ■送付方法:
    郵送に限ります(10月16日必着)。A2用紙のパネル化はしないでください(スチレンボードなどで裏打ちしないでください)。送付の際は、用紙を丸めずに段ボール紙などに挟んで折れ曲がらないようにしてください。

    ■その他:
    ・応募作品は未発表のオリジナル作品に限ります。応募に関する質疑応答はいたしません。応募要項の内容に記載していない部分は応募者の自由決定とします。
    ・応募作品および入賞作品は返却しませんので、必要な場合はあらかじめ複製をとっておいてください。
    ・応募作品の著作権は応募者に帰属しますが、応募作品の発表権は日経アーキテクチュアが保有するものといたします。同一作品の、他設計競技との二重応募はご遠慮ください。既発表作品であったことや二重応募が発覚した場合は、審査後であっても失格とし、入賞を取り消すことがあります。
    ・応募作品の一部あるいは全部が、他者の著作権を侵害するものであってはなりません。また、雑誌や書籍、WEBページなど、著作物から複写した画像を使用しないでください。著作権侵害の恐れがある場合は、主催者の判断により入賞を取り消すことがあります。

    ■送付先:
    〒108-8646 東京都港区白金1-17-3
    日経BP 社 日経アーキテクチュア編集 コンペ係