「羽田の再拡張事業など,これから本格化する大規模プロジェクトに対応していけるのだろうか……」。クレーンを所有するある専門工事会社社長はこのように話す。

 低入札などの影響で,下請け会社は元請けから指し値での交渉を余儀なくされる現状がある。下請け会社にとって適正な価格で仕事を引き受けられない状況が続けば,自社で重機を抱える専門工事会社は,その更新がままならない。

 日経コンストラクションに,重機を扱う下請けの専門工事会社の元経営者から,廃業して新たな道に進むという投稿があった。「いまある重機や道具を使い切ったら再び購入できないところまで行った。もうこの先どうにもならないと,手持ちの資金があるうちに従業員を解雇し,機械を売却した」。元経営者はこのように述べている。

 クレーンを所有する専門工事会社の組織,東京建設重機協同組合で加盟会社を対象に実施した調査で,稼働しているクローラークレーンのうち10年以上使用しているものが約7割を占めていることがわかった。同様に,ラフタークレーンについては,10年以上が全体の約4割を占めている。クローラークレーンの更新までの年数はおよそ十数年~20年弱で,ラフタークレーンはそれよりもう少し短い。組合関係者は,「更新がスムーズにいかなければ,元請け会社の要望に応えられない事態が起こる。そしてこれは,東京だけの問題ではない」と指摘する。

 職人の確保が困難な状況下では,今後,現場で重機のニーズはより高まるだろう。ニーズはあるのに肝心の重機が足りないのでは,プロジェクトの進ちょくに影響する可能性もある。下請け会社の報酬の多寡が,こんなところにも影響している。

 前出の専門工事会社社長は,公正取引委員会が建設会社5社に対して不当廉売で警告したことや,国土交通省などが実施している低入札対策を前向きに受け止めている。下請け会社がやりがいを持って仕事を引き受けられるかどうかは,元請け会社の適正な価格での受注にもポイントがありそうだ。