「クリエイティブなワークプレイス」の構築が、企業経営の重要課題の一つになっている。少し古い(2004年3月)データだが、日本経済新聞に日本、中国、韓国の企業経営者のアンケート調査が載ったことがある。企業が競争力を増すうえで重点を置くべき要素について、各国の経営者の考え方が明らかにされていた。

 結果にはお国柄が表れていた。「経営者の資質」「従業員の能力」「組織力」「製品開発力」「新商品・サービスの創造力」「コスト競争力」「マーケティング能力」といった項目のうち、中国と韓国の経営者が最も重視するのが「経営者の資質」であったのに対して、日本の経営者は「新商品・サービスの創造力」を最重視していた。

 人件費が世界で最高レベルに達する一方、人口減少に入る成熟国の日本では、市場を海外に求めない限り企業の永続的な発展は難しい。グローバル市場における激烈な競争の勝者となるためには、製品、サービスの付加価値を高めることが、企業経営の重要課題だと経営者が考えるのももっともなことである。

 製品やサービスの付加価値の源泉が、個々人の創造性(クリエィティビティ)やアイデアにあることは言うまでもない。その創造力を発揮しやすい“仕事の場(ワークプレイス)”を構築することに企業経営者の関心が向くようになり、人、モノ、カネ、情報に次ぐ第五の経営資源として、ファシリティ(施設や執務空間等)の整備、効率的運用にもスポットが当たってきた。

 今年3月に、第1回の日本ファシリティマネジメント大賞(審査委員長:沖塩荘一郎東京理科大学名誉教授)が選ばれた。筆者も審査委員の一人として、経営コンサルティングのアクセンチュア(最優秀賞)や人材紹介サービスのインテリジェンス(優秀賞)のオフィスを訪問させていただいたが、まさに経営的な視点から生産性を高め、社員に快適性を与えるよう環境の整備に努力されていることに感心した。