5月16日、六本木ヒルズ森タワーで、アカデミーヒルズが主催する「第38期アーク都市塾兼2007年度Roppongi BIZオープニング記念セミナー」が開催された。パネルディスカッションのテーマは、「これからの東京、ビジネスと感性が融合する都市像」。一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎氏(アーク都市塾塾長)がモデレーターを務め、建築家の隈研吾氏、前総務相で慶応義塾大学教授の竹中平蔵氏(アカデミーヒルズ理事長)がパネリストとして登壇。東京の将来のあり方ついて、議論を交わした。

六本木ヒルズ森タワーで行われたパネルディスカッションの様子。左から米倉誠一郎氏、隈研吾氏、竹中平蔵氏(写真:日経アーキテクチュア)
六本木ヒルズ森タワーで行われたパネルディスカッションの様子。左から米倉誠一郎氏、隈研吾氏、竹中平蔵氏(写真:日経アーキテクチュア)

 パネルディスカッションに先立ち、アカデミーヒルズを運営する森ビルの森稔社長がビデオで挨拶。同社が、アジアの都市競争力について、上海、香港、台北、シンガポール、東京のアジア5都市のビジネスパーソンを対象に実施した意識調査の結果を紹介した。この調査では、現在のビジネス中心の都市については各都市がほぼ同評価になっているのに対し、5~10年後のアジアのビジネス中心都市として上海を挙げる人が55%を占めた。東京は10%にとどまり、国際競争力の低下が危ぐされる状況だと結論付けている。

グローバルマーケットに都市計画がなった

 「東京と香港を日帰り圏にしよう」――。竹中氏はディスカッションの冒頭、政府の「アジア・ゲートウェイ戦略会議」が16日に公表した最終報告ついて触れ、「がっかりする内容だった」と語った。欧米とアジアをつなぐゲートウェイ機能を東京が中心となって果たすべきだとの観点から、航空自由化(オープンスカイ)に言及。「羽田を24時間空港にするだけでなく、空港に自由に路線を決めさせればいい。空港が利益を最大化して、消費者にとって一番いい路線を引いてくれる。だが、官僚の厚い壁に阻まれてできない」と述べた。「東京は魅力のある街になりつつある。重要なチャンスなのに、建設的な危機感を欠いている。このままでは地盤沈下してしまう恐れがある」と指摘した。

 米倉氏は「国内のロジックで考えているから、世界とかい離を生んでしまう」と応じ、隈氏に「東京は面白いという説と壊滅的だという説があるが、建築の世界からみてどうとらえるか」と質問した。

 隈氏は、「現状は様々な意見がある。ただ、これからどうしようかといった“熱さ”という点では、ものすごくゆっくりしてしまった感じだ」と語った。東欧や米国・ラスベガスの事例を紹介し、「各都市でデザインをどうしようか、どのような街づくりをしようかといった議論は、ものすごい速度で面白いアイデアを求めている。アイデアは地元の人に聞こうというのではなく、面白いことを考えている人がいたら世界中からすぐに呼ぼうという姿勢だ。グローバルマーケットに都市計画がなった」と指摘した。

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