住民参加型道路管理をICTでサポート

  長崎の取り組みでは、通報の受付から講義などを長崎大学が中心として行っているが、各“道守”からの通報の受付、回答をFAX、電話ベースで行う必要があったり、離島などへも出張講義を行うことが必要であるなど、運用方法の効率化が課題となる。

  こうした課題に対しては、ICTの活用が有効だ。そこで、同種の活動を展開している長崎、東京、岐阜が参加し、総務省「地域ICT利活用広域連携事業」として、各地域において自治体・第3セクター・大学・住民(NPOなど)が協働しつつ、各地域が重層的・広域的に連携する、新しい社会資本の維持管理の仕組みを構築するプロジェクトをスタート。2010年度から2年間でシステム開発を行った。

  その中心となるシステムが「みまもりサポートシステム」と「インフラeラーニングシステム」である(東京大学大学院情報学環「社会連携講座の活動成果 関連研究の概要」)。

  「みまもりサポートシステム」では、点検をサポートする市民ボランティアが発見した橋梁の損傷状況・画像を道路管理者に携帯電話などを通じて連絡することができる。また、通報者は、道路管理者の対応状況も確認することができる。

  「インフラeラーニングシステム」では、ネットワークに接続されたPCへ各種の人材育成教材などを提供するシステムで、受講者は、パソコン端末を通じて講義を受けることができる。遠隔地でも講義を受けることができることに加え、何度でも反復することができる。これによって、技術者育成の効率化と技術者の増員を狙うものだ。

  これらのシステムにより、道守養成ユニットのような道路に関する異常通報活動や教育活動の効率化が図れる。さらに、各地域の既存資産(インフラ維持管理のためのシステムや教育コンテンツなど)を地域間で流通、相互利用することも可能となるため、一層の効果が期待できる。

  展開の仕方は地域それぞれだが、今回開発したシステムは全国各地に利用が広がりつつある。2012年4月には、北海道地域、関西地域がこの広域連携プロジェクトに参画している。2013年度以降も、順次他地域の参加を促しつつ、各地域では住民参加型道路管理におけるICT活用を継続していく予定である。

図4 みまもりサポートシステムとインフラeラーニングシステムの概要(資料:東京大学大学院情報学環「社会連携講座の活動成果概要2009-2011」)
図4 みまもりサポートシステムとインフラeラーニングシステムの概要(資料:東京大学大学院情報学環「社会連携講座の活動成果概要2009-2011」)