前回のコラムでは、施設管理におけるセンサーの活用状況を紹介すると共に、センサー情報を他の情報と組み合わせて活用することなどによって新たな価値を生み出す可能性について述べた。
今回は、二つの活用事例を紹介しながら、センサー情報の利活用の方向性について考えたい。
1.東京ガスの取り組み:超高密度センサーを活用したリアルタイム地震システム
低圧ガスの利用者(一般家庭など)に都市ガスを供給するパイプのことを「低圧導管」という。東京ガスの供給エリアには、総延長4万6000kmを超える低圧導管が敷設されており、そのすべてを耐震化することは困難だ。そこで同社では、緊急対策として地震防災システム「SUPREME(シュープリーム)」を開発・導入。2001年7月から運用を始めた。
東京ガスでは、首都圏を中心に1都6県に及ぶ同社の供給エリア内の約4000カ所にある地区ガバナ(都市ガスの圧力を中圧から低圧に減圧するための整圧器)すべてに地震センサー「新SIセンサー」を設置した。約1km2に1基以上という超高密度のセンサーネットワークということになる。センサーがおよそ震度6弱に相当するSI値である40~60カインを観測した場合に、地区ガバナの遮断装置が作動し、安全にガス供給を停止する仕組みだ。
2011年の東日本大震災の際には、同システムが稼働し、確実・安全に供給停止判断をサポートした。茨城県日立市などの揺れが大きいエリアの低圧導管については的確にガスの供給が停止され、供給を継続するべきところは継続された。これにより、供給停止エリアを最小限に抑えて住民生活の利便性を最大限維持しつつ地域の安全の確保にも貢献した。
従来、地震発生時には、作業員が個々の地区ガバナに出向き、ガスの供給を停止しており、大規模地震時には、停止作業に40時間程度かかると想定されていた。これがSUPREMEの導入により、わずか10分に短縮されるので地震発生時に迅速な安全確保ができる。さらに、ガスの供給停止を行う防災ブロックの細分化を現在も進めており,大規模地震における供給停止エリアの極小化を目指している。