現場所長の前向きなCIM活用が成果に
見草トンネルの施工におけるCIM活用は、当コラム2013年10月2日付けの記事でもお伝えしたように、3Dモデルと属性情報を切り離して扱えるようにしたのが特徴だ。日常的に作成しているExcelの施工管理情報を、トンネルの3Dモデルの属性情報として後付けできるようにしたのだ。
その結果、CIMソフトの使い方は分からなくても、日常業務をExcelで行うと、そのデータが3Dモデルに吸い上げられ、分かりやすい形で見ることができる。こうして、現場でのCIM活用に対するハードルが下がり、多くの技術者がCIMユーザーとしての恩恵を享受することができた。
今回、電子納品したCIMモデルデータは、こうして現場全員で作ってきた施工管理データを発注者にも分かりやすく整理し、維持管理段階で利用しやすくしたものと言える。
「これだけのことができたのも、現場所長がCIM活用に対して前向きだったからだ。特記仕様書などには書かれていなかった電子納品も、当初から予定していた」(杉浦氏)。
大林組はトンネルの掘削、覆工と路面の舗装までを担当した。その後の照明などの設備工事は他社が担当している。
維持管理業務で最も重要なのは設備だが、設備工事は大林組の担当外だ。今回、電子納品したCIMモデルデータに、設備の情報が追加されるとさらに維持管理段階での使い勝手や業務の効率化は高まると考えられる。
「今回の電子納品は、大林組としてできる限りのことをやった」と、杉浦氏は言う。CIMモデルの今後の活用は、発注者が維持管理の業務にCIMをどう位置づけていくかという考え方にかかっている。
トンネル竣工直後のデータは、経年劣化の度合いを判断するための基準となる貴重なデータだ。CIMの導入によって、最もメリットを受けるのは、発注者であるべきだ。貴重な電子納品データが、今後の維持管理業務の生産性向上に、ぜひ有効活用されることを願いたい。