大林組は今年3月、和歌山県で施工した近畿自動車道紀勢線の見草トンネルが完成したのに伴い5月、施工管理で使っていたCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)モデルデータを自主的に電子納品した。完成時のCIMモデルを残しておくことで、今後の維持管理に活用してもらおうという施工者の提案が込められた発注者へのプレゼントだ。

 大林組は、国土交通省が進めるCIMの試行工事とは別に、自社独自でCIMの現場活用を進めている。

 「トンネル工事では全国で約20件の工事でCIMを活用している。その“原点”とも言えるのが、見草トンネルでのCIM活用だ」と、大林組土木本部本部長室情報企画課長の杉浦伸哉氏は語る。

 この工事は国交省のCIM試行工事ではないため、データの電子納品については、特に特記仕様書や契約書には盛り込まれていなかった。大林組では、今後の維持管理に活用してもらおうと、発注者の国土交通省近畿地方整備局紀南河川国道事務所に対して自主的に納品したのだ。

 まだ、CIMモデルの電子納品はもちろん、施工管理で使うCIMモデルの作成についても公的な基準はない。こうした段階で、CIMモデルを納品した事例は極めて珍しい。日本初の試みと言えるかもしれない。

見草トンネルのCIMデータイメージ。トンネルの3Dモデルに施工管理時の計測結果や写真などがリンクされている(資料:大林組)
見草トンネルのCIMデータイメージ。トンネルの3Dモデルに施工管理時の計測結果や写真などがリンクされている(資料:大林組)

発注者に提出したCIMデータのフォルダ構成(資料:大林組)
発注者に提出したCIMデータのフォルダ構成(資料:大林組)