高度成長期の1960年代に建設された社会インフラは、完成から50年を経過するものが急激に増えている。こうした背景の下、大手電機・通信会社が続々と社会インフラの維持管理に関連する新技術や新製品を開発している。その特徴は画像や音響、センサーなどに関する技術を斬新な方法で活用し、維持管理の省力化、低コスト化を徹底追求していることだ。

音波で“壁ドン”、空洞を見える化
「コンクリート探傷システム」(東芝)

 コンクリート構造物のチェックには、これまでは専門家が小さなハンマーなどで表面をたたき、その音で「浮き」や「空洞」の位置を判断し、記録するという手間ひまのかかる作業が必要だった。

 東芝がこのほど開発したコンクリート探傷システムは、この作業を大幅に効率化した。

 その大きな特徴は、コンクリートの表面をたたく方法として、指向性スピーカーが発する音を使っていることだ。つまり、ハンマーの代わりに音波で“壁ドン”しているわけなのだ。

コンクリート表面をスピーカーの音でたたく「コンクリート音響探傷システム」(資料:東芝)
コンクリート表面をスピーカーの音でたたく「コンクリート音響探傷システム」(資料:東芝)

 装置にはレーザー計測器も搭載されており、音でたたかれたコンクリート表面の振動速度を計測する。

 そのデータを東芝独自の解析技術を使って、コンクリート表面の浮きや空洞などの位置を把握し、モニター画面上に可視化する仕組みだ。

 習熟した検査員が不要なので、機器さえあれば誰でもコンクリートの検査を行える。

装置にはハンマー代わりのスピーカーとレーザー測定器が搭載されている(資料:東芝)
装置にはハンマー代わりのスピーカーとレーザー測定器が搭載されている(資料:東芝)

モニター画面上に可視化されたコンクリートの浮きなど(資料:東芝)
モニター画面上に可視化されたコンクリートの浮きなど(資料:東芝)

 このシステムは、音響技術を使っているので、5m以上離れた地点からでも検査することが可能だ。そのため、足場や高所作業車などが不要となる。

 コンクリートの欠陥を面的に検査する方法として、赤外線カメラも使われているが、音響を使ったこのシステムは、太陽光が当たらないトンネル内部などでも使えるので便利だ。

 東芝グループでは老朽インフラの検査機器事業に力を入れており、「3D画像再構成・変化検出システム」や「溶接部探傷ロボット」などの開発も進めている。

 この「コンクリート音響探傷システム」は本年度中の実用化を目指しており、7月22日から東京ビッグサイトで開催される「インフラ検査・維持管理展2015」で展示される。