衛星画像で2mメッシュの3Dデータを作成
「全世界デジタル3D地図提供サービス」(NTTデータ、リモート・センシング技術センター)

 NTTデータとリモート・センシング技術センター(RESTEC)は、人工衛星から撮影した画像をもとに作成した5mメッシュという高解像度の数値標高モデル「全世界デジタル3D地図提供サービス」を2014年2月から提供している。5m解像度の細かさと、5mの高さ精度のデータの提供は世界初だという。同サービスは、2015年3月時点で全世界の約6割の陸域をカバーしており、2016年3月までに残りも完成させる予定だ。

 このデジタル3D地図がこのほど、さらにパワーアップし、2mメッシュというさらに高解像度の高精細版3D地図が追加された。

 従来の30~90mメッシュに比べて大幅に精度が向上したことから、5mメッシュの3D地図はアジアやアフリカなどの新興国での地図整備や防災対策、資源の鉱区探査など幅広い分野に利用されてきた。

 ところが、建築物となると5mメッシュのデータでも、再現が難しかったのだ。そこでNTTデータとRESTECは、さらに解像度が高い2mメッシュのデータ提供を開始することとなった。これで都市部の地図を見比べると建物の細かな形もくっきりと表現できるようになった。

5mメッシュの3D地図。建物の形はつぶれている(資料、写真:NTTデータ、RESTEC)
5mメッシュの3D地図。建物の形はつぶれている(資料、写真:NTTデータ、RESTEC)

2mメッシュの3D地図。建物の形もくっきりとわかる(資料、写真:NTTデータ、RESTEC)
2mメッシュの3D地図。建物の形もくっきりとわかる(資料、写真:NTTデータ、RESTEC)

2mメッシュで表現したタイ・バンコクの3D地図(資料、写真:NTTデータ、RESTEC)
2mメッシュで表現したタイ・バンコクの3D地図(資料、写真:NTTデータ、RESTEC)

 3D地図は、高さを示す数値標高モデルのデータを、任意のエリア(最低25平方キロメートル)に対して提供する。価格は1平方キロメートル当たり1万1000円からとのことだ。

 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)のモデル作成にも便利に低価格で使えそうだ。

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 これまでインフラの維持管理は建設関連の企業や技術者が中心となって行われてきた。その発想は、どうしても古典的な土木工学の理論や、現場を目で確かめるという従来のものになりがちだ。

 一方、今回、紹介した大手電機、通信会社のインフラ維持管理に対するスタンスは、限られた情報からいかに必要な維持管理を実現するかを追求しているように思える。

 例えば、ハンマーの代わりに音波を使う、斜面崩壊の解析に必要な様々な土質パラメーターを水分量や振動特性から求める新たな「代用特性」を生み出す、個々の街並みデータを手づくりする代わりに人工衛星で撮影した画像を使って大量生産する、といったこれまでにないインフラ管理に対するアプローチだ。

 こうした新しい手法を開発したり、世の中の使える技術を探し出したりするのは、もはや建設技術者だけでは難しいのかもしれない。

 少子高齢化が本格化してきた日本では、今後、年々厳しくなっていく公共投資の中で、社会インフラをいかに効率的、低コストで維持管理していくかが課題となっている。建設とITというこれまでは“水と油”の関係だった両分野の技術を融合することで、この課題を解決するための技術開発に新しい道が開けそうだ。