3つのセンサーだけで漏水量を推定
「新型漏水管理システム」(日立製作所)

 水道事業者にとって頭が痛いのは、配水管からの漏水問題だ。日立製作所によると東南アジアでは、漏水によるロスが30%を超えている地域もあるという。

 しかし、都市内に網の目のように広がる配水管のどこで漏水が起こっているのかを突き止めるのは容易ではない。

 配水管網のあちこちにノイズを検知するセンサーを取り付けて漏水個所を探し当てる方法もあるが、膨大な数のセンサー設置工事が必要だったり、周辺の環境によっては検知が難しかったりという問題もあった。

 そこで日立製作所はこのほど、新型の漏水管理システムを開発し、6月10日から販売を開始した。その特徴は、漏水検知に必要なセンサーの数を大幅に削減したことだ。

新型の漏水管理システムのイメージ図(資料:日立製作所)
新型の漏水管理システムのイメージ図(資料:日立製作所)

 このシステムは、配水管路網を小エリアに分けて、そのエリアごとに漏水量を推定する。

 漏水量の推定に必要なセンサーは 、配水エリアの入り口に圧力センサーと流量センサーが1つと、配水管網の小エリアに圧力センサーが1つだけだ。

 そして、水道管の材質、敷設年次、老朽度などのアセット情報をもとに水理解析シミュレーションを行い、小エリアの圧力センサーの計測値とシミュレーションによる計算値を比較する。

 この差が大きいと、小エリア内の漏水量も大きいことが予測できるわけだ。

 ITによる漏水検知というと、単純にセンサーをたくさんつけることを考えがちだが、このシステムではセンサーだけでなく圧力損失の理論などもうまく活用しているようだ。

 日立製作所はこのシステムを2013年8月から2014年9月までシンガポール公益企業庁(PUB)の水道管網でフィールド試験を行うなど検証を重ね、販売に踏み切った。今後、東南アジアなどの新興国向けに販売していく。