世界初の“全線架線レス”方式を採用

 このLRTには大きな特徴がある。電力で走る電車にもかかわらず、全線にわたって駅間には架線がないことだ。

完成した駅で試験中の車両。軌道上には架線が見当たらない(写真:家入龍太)
完成した駅で試験中の車両。軌道上には架線が見当たらない(写真:家入龍太)

 その秘密は、車両に搭載された「キャパシター」という蓄電装置にある。実は、各駅には車両の停車スペースの上にごく短い架線が取り付けてあり、停車するたびにパンタグラフを上げて架線に接触させる。

 そして停車中の20~25秒という短時間でキャパシターに充電し、次の駅まで走行する電力を車両に蓄えるという仕組みだ。充電が終わったら、またパンタグラフを下げて走行を続ける。

 また、走行中にブレーキをかけるとモーターが発電し、その電力をキャパシターに充電できるので省エネにも貢献する。

各駅にはごく短い架線が設置してあり、停車中にパンタグラフを上げて車両のキャパシターに充電する(写真:家入龍太)
各駅にはごく短い架線が設置してあり、停車中にパンタグラフを上げて車両のキャパシターに充電する(写真:家入龍太)

(資料:高雄市政府捷運工程局)

架線レスLRTの仕組み

1.キャパシターに満充電して駅を出発する 2.駅間を走行するときは、車両に搭載したキャパシターの電力を使う 3.ブレーキをかけるとモーターが発電し、その電力をキャパシターに回収し、再利用できる >4.駅に到着するとパンタグラフを上げてキャパシターを再充電する(資料:高雄市政府捷運工程局)

 このLRTシステムは、スペインのCAF社製のものだ。高雄市政府捷運工程局のチーフエンジニア、シ・メイメイ氏は、「一部区間で架線レスにしたLRTの例は他国でもあるが、全線にわたって架線をなくしたのは高雄市が初めて」と胸を張る。

高雄市政府捷運工程局の建物(左)とチーフエンジニアのシ・メイメイ氏(右)(写真:家入龍太)
高雄市政府捷運工程局の建物(左)とチーフエンジニアのシ・メイメイ氏(右)(写真:家入龍太)

 高雄市が導入を進めるLRTの注目ポイントは、架線レスのほかにもう一つある。それは、信号制御に導入した「路面電車優先システム」だ。

 道路と平面交差することの多いLRTは、道路の信号によって停車を余儀なくされるため、定時運行が難しい面もある。そこで高雄市では、路面電車が近づくと、路面電車を優先的に走行させるように信号を制御し、定時運行と利便性の向上を図るシステムを導入したのだ。

路面電車優先システムのイメージ図(資料:高雄市政府捷運工程局)
路面電車優先システムのイメージ図(資料:高雄市政府捷運工程局)