凍土遮水壁の工事状況など
福島第一原子力発電所内では、汚染水対策として(1)汚染源を取り除く、(2)汚染源に水を近づけない、(3)汚染水を漏らさない、という3つの基本方針を立てて対策を進めている。
「(1)汚染源を取り除く」の対策としては、日量250トンを処理できる既設の多核種除去設備に加えて、同規模の処理能力を持つ多核種除去設備を増設した。日量500トンを処理できる高性能多核種除去設備を増設した。
今後はタービン建屋から海側の地中に設けられた「トレンチ」と呼ばれる設備用トンネル内にたまった汚染水を除去することが課題となっている。
1号機から4号機までの原子炉建屋をぐるりと取り囲む後述の凍土遮水壁と混同されがちだが、トレンチ内部も凍結工法とコンクリート充てんして汚染水の流入をストップさせた後に、汚染水を排水。タービン建屋との間をふさいで切り離す計画だ。
この作業が完了すれば、地下水の汚染源は凍土遮水壁の内部に閉じ込められた形となり、よりコントロールしやすくなりそうだ。
「(2)汚染源に水を近づけない」の対策としては、前述の敷地内舗装のほか、1号機から4号機をぐるりと取り囲む陸側の凍土遮水壁の構築工事が進んでいた。
現場では地盤に凍結管が打ち込まれ、冷媒を循環させる配管の工事が行われていた。東京電力は、4月に一部(凍結しにくい箇所)先行凍結というスケジュールを発表している。
そして「(3)汚染水を漏らさない」の対策としては、陸側の凍土遮水壁から海側をぐるりと囲むように、海側遮水壁が設置されていた。直径約1メートルの防水性のある鋼管矢板を地下水の通り道である浸透層の下までならべて打ち込むことにより、地下から海への汚染水流入をブロックするものだ。
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福島第一原発では、毎日、数千人の作業員が汚染水タンクや凍土遮水壁の建設、トレンチからの汚染水くみ出し、ロボットによる原子炉建屋内の調査、がれきの撤去作業などの作業を続けている。
これらはすべて燃料デブリの取り出しという究極の作業につながるといっても過言ではない。
燃料デブリを取り出す工事は、早ければ1号機と2号機は2020年度上半期、3号機は2021年度上半期から始まる見込みだ。あと5~6年後の話だ。
その工事は、2ページ目で紹介したように、世界最先端の技術を集大成した大事業になりそうだ。そして、ここでの技術開発の成果は、将来の建築・土木工事の方法も大きく変えていくに違いない。
なお、今回の取材はYAHOO!ニュース個人の取材チームの一員として東京電力の協力のもと、行ったものだ。