増築中の米国・サンフランシスコ近代美術館は、東側に複雑な曲面からなるファサードを備える。この複雑なファサードを実現するため、1枚ずつ形が違うグラスファイバー製パネル700枚を工場で製作した。この複雑な形状のパネルは、発泡プラスチック部材をCNC(コンピューター数値制御)の電熱カッターやルーターで加工した型で作ったものだ。
米国・サンフランシスコの中心街で今、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)の増築工事が行われている。
特徴的なのは、東側に面するファサードだ。複雑な曲面で構成され、しかも横方向には不規則な波形の凹凸が付いているのだ。
ファサードをよく見ると、縦形のコンクリートパネルのようなものが無数に並んでいるのが分かる。
しかし、これはコンクリートではなく、グラスファイバー製(FRP)の外装パネルなのだ。
形が違う700枚のFRPパネルを工場製作
外装パネルの数は、約700枚にも上る。それぞれ違う形のFRPパネルを製作するために、3Dによる設計とCNC工作機械がフルに使われた。
増築工事の設計はスノーヘッタ(Snøhetta)、元請けは大林組の子会社であるウェブコー・ビルダーズ(WEBCOR BUILDERS)が担当している。専門工事として、ファサード工事はエンクロス(Enclos)、そして波打ったFRPパネルの製作はクライスラー・アンド・アソシエーツ(Kreysler & Associates)が担当している。
外装材は防火材、鉄骨フレーム、そしてFRP製パネルの3つを組み合わせたものだ。
建物本体の鉄骨はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトのRevitで設計し、その表面を平面の外装材ですき間なく覆えるように形状を決めた。
「ファサードに曲面や凹凸を付けられるのは、仕上げ材のFRP版の部分だ。FRP版に凹凸を付けられる厚さの範囲が決まっているため、パネルの配置には苦労した」とウェブコー・コンストラクション副社長で現場所長を務めるマシュー・ロシー(Matthew Rossie)氏は語る。
外装材のパネル割りは、当初、横長のタイプを採用することを考えていた。しかし、雨水の処理などにより、縦長のものに変更されたという。