建物や橋の形も生物に似てくる

 ジェネレーティブ・デザインは、英語で書くと「Generative Design」、つまり“生成する設計”という意味だ。

 例えば、建物の場合は「省エネルギー性能の最適化」をゴールとした場合、建築可能な空間の範囲、必要な部屋数などをコンピューターに入力することにより、コンピューターが少しずつ形を変えながらシミュレーションを行い、最適な形を選び出す、という過程となる。

建物のシミュレーション過程の例(資料:米オートデスク)
建物のシミュレーション過程の例(資料:米オートデスク)

 これまでもBIMによる設計では、様々な曲面や配置をコンピューターに自動発生させて設計者が選んだり、BIMモデルを元に建物のエネルギーシミュレーションを行ってその結果を設計にフィードバックしたりして、設計の最適化を行う例もあった。

 ジェネレーティブ・デザインとは、コンピューターによる形の生成とシミュレーションによって、ゴールとなる性能条件への適合を判断し設計にフィードバックする、というサイクルをコンピューターで自動的に膨大な回数を繰り返すものだ。

 人間の手によってシミュレーションと結果のフィードバックを繰り返す場合、設計の修正はせいぜい数回のレベルだろう。これがジェネレーティブ・デザインだと、すべての部材断面まで徹底的に最適化を追求することになる。

 その結果、建物やモノの形はどのようになっていくのか。コワルスキー氏は「生物の形に似てくるだろう。なぜなら生物は進化しかしないからだ」と基調講演の中で語った。

機械などの形はだんだん生物に似てくる(写真:家入龍太)
機械などの形はだんだん生物に似てくる(写真:家入龍太)

 つまり、ジェネレーティブ・デザインは、コンピューターと数式によって人間が作り出せない形などをデザインする手法である「アルゴリズミック・デザイン」や「コンピューテーショナル・デザイン」、性能を検証する「シミュレーション」、その結果を設計に反映する「フィードバック」や「最適化」などを包含するコンセプトの言葉と言えそうだ。

3Dプリンターによる鋼橋架設工事のイメージを語るコワルスキー氏(写真:家入龍太)
3Dプリンターによる鋼橋架設工事のイメージを語るコワルスキー氏(写真:家入龍太)

 ジェネレーティブ・デザインのように、コンピューターがモノの形を決める設計手法が普及してくると、設計者の役割はどうなるのだろうか。

 この問いに対しコワルスキー氏は「人間の設計者の役割は、これから作ろうとするものの設計のゴールをコンピューターにうまく伝え、出てきた結果を選ぶということに変わるだろう」と語った。

 結果の良しあしを、人間の好みに合ったものかどうかを判断する方法をコンピューターに伝えることができれば、さらに設計の自動化が進むことになる。