3Dデータから実際の模型を作る3Dプリンターは、造形に使える材料の種類や造形できるサイズも多様化し、実物の機械や構造部材なども作れるようになりつつある。その結果、コンピューターが最適な形を決める「ジェネレーティブ・デザイン」という手法によって、建物や橋などの構造物はだんだん生物に似てくることになりそうだ。
12月2日~4日(現地時間。以下同じ)、米国ラスベガスで「Autodesk University 2014」(以下、AU2014)が開催された。オートデスク製品ユーザーを対象に毎年開催されているこのイベントは23回目を迎えた。今回は世界中から1万人を超える参加者を集め、過去最大規模となった。
この盛り上がりの背景には、米オートデスクが3Dプリンターの技術革新に乗り出したことがあった。
ジェネレーティブ・デザイン――構造物の形はコンピューターが決める
12月2日に基調講演を行った米オートデスクのCTO(最高技術責任者)のジェフ・コワスルキー(Jeff Kowalski)氏は、近未来の設計について「モノの形はコンピューターが決める時代になる」、と大胆に予測した。
これまでの建物や機械は、規格で断面の形や材質が決まっている材料や、直線や円などのシンプルな幾何学的形状を元に設計・製造されてきた。
しかし、3Dプリンターによって自由な形が作れるようになると、それに対応してコンピューターがモノの形を決める「ジェネレーティブ・デザイン」という設計手法が実用的になるというのだ。
現在の設計は、人間がCADやBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトなどで建物などの形を決めているが、基本となる形状は平面や円、長方形などシンプルな形をペースにしている。
それに対し、コワルスキー氏は「これからは、その部材は何の一部か、何と関係があるのか、必要とされる機能は何かという要件をコンピューターに教えると、コンピューターが最適な形を生み出してくれるようになる」と語ったのだ。
例えば、オートバイの後輪を支える「スイングアーム」という部品は、オートバイやライダーを支える場所や荷重の向きと大きさ、そして材質という設計の要素と、ゴールとなる性能要件をコンピューターにインプットすると、コンピューターがシミュレーションとフィードバックを繰り返しながらスイングアームの形状を自動的に最適化してくれるというものだ。
そして鋼、アルミ、チタンなどの材質を変えると、材料の力学的特性に応じて最適な形も変わってくることになる。
12月3日、日本人記者団に会見を行ったコワルスキー氏は、材質ごとに最適化されたスイングアームの形を3Dプリンターで造形した模型や、形を最適化した熱交換器を3Dプリンターで造形したチタン製の部品を披露した。