iPhoneで紙図面の縮尺を合わせて表示・印刷:アーキスケール(アーキノート)

 雑誌やウェブサイトには、設計の参考になりそうなCAD図面や手描き図面がいろいろと掲載されている。これらをスクラップして比較検討する際に重要なのが、縮尺を合わせて表示することだ。

 しかし、この「縮尺を合わせる」という作業に多くの時間を費やしている建築家や設計者は、意外と多そうだ。こうした単純作業を合理化するため、アーキノート(本社:川崎市川崎区)はiPhone、iPadアプリ「アーキスケール」を開発し、無料公開した。

iPhone、iPad用アプリ「アーキスケール」の画面。クリップした図面をアイコンやファイル名で探し出せる(資料:アーキノート)
iPhone、iPad用アプリ「アーキスケール」の画面。クリップした図面をアイコンやファイル名で探し出せる(資料:アーキノート)

 このアプリの特徴は、雑誌やウェブサイトに載っている建築図面をiPhoneなどで撮影し、写真化された図面に縮尺情報を付けることができることだ。

 いったん、縮尺情報を付けた図面は、1/5~1/600の様々な縮尺で自由に表示したり、PDFで出力したりできる。

 いったい、どこが便利なのか、どのようにして縮尺情報を付けるのか。筆者もiPhoneにダウンロードして試してみた。

 まずはウェブサイトに載っている適当な図面を探して、画面に表示させ、iPhoneで撮影した。

ウェブサイトに掲載されている図面を「アーキスケール」で撮影(写真:家入龍太)
ウェブサイトに掲載されている図面を「アーキスケール」で撮影(写真:家入龍太)

 しばらくすると撮影した図面写真を長方形に補正するための赤枠が表示される。四隅の赤丸を指でタッチすると拡大図が出てくるので、建物の外形など長方形の部分と合うように赤丸の位置を調整する。

図面上の長方形部分に赤丸の位置を合わせる(写真:家入龍太)
図面上の長方形部分に赤丸の位置を合わせる(写真:家入龍太)

 そして画面右上の「レ」の字型のチェックボタンをタップすると図面が長方形に調整される。その次がいよいよ、図面に縮尺を与える工程だ。

 アプリ上でもとの図面と近い縮尺を選び、物差しの形をしたアイコンをタップすると画面の周囲にスケールが表示される。

 図面上の適当な2点間の長さを寸法線などで調べ、その2点間の長さがスケールに合うように図面の画像を指で拡大・縮小して調整する。若干の誤差はありそうだが、これで縮尺情報が写真化された図面に与えられるのだ。

スケールに図面上の長さが分かっている部分が合うように図面を拡大・縮小して調整する(写真:家入龍太)
スケールに図面上の長さが分かっている部分が合うように図面を拡大・縮小して調整する(写真:家入龍太)

 満足がいく大きさに調整できたら、適当な図面名を付けてiPhoneに保存する。あとは必要なときに、この図面を読み出して、1/5~1/600の好きな縮尺で表示するだけだ。さらに便利なのは、所定の縮尺と用紙サイズを選んでPDFファイルを作成し、メールで送る機能が付いていることだ。

先ほどの図面を1/50(左)と1/200(右)の縮尺で表示したところ(写真:家入龍太)
先ほどの図面を1/50(左)と1/200(右)の縮尺で表示したところ(写真:家入龍太)

先ほどの図面をA4用紙に1/50のサイズで印刷する設定で作成したPDF(写真:家入龍太)
先ほどの図面をA4用紙に1/50のサイズで印刷する設定で作成したPDF(写真:家入龍太)

 もちろん同様のことはスキャナーやパソコンでもできるし、その方が高画質で高精度なことは間違いない。しかし、出先などで参考になりそうな図面を見つけても、その手間を考えると結局、見逃してしまうことになりかねない。

 このアプリを使って感じたのは、iPhoneのカメラで図面を写真化し、ひずみや縮尺の調整までを2ステップで行い、すぐに保存できる機動力の高さだ。目の前に参考になりそうな図面が転がっていたら、胸ポケットからiPhoneを取り出して、こまめに記録しておこうという気になる。iPhoneならではの手軽さで、チャンスを確実にものにできそうだ。