2D図面を3D化、工程管理表の作成も

 K-engineサービスでは、図面上のデータは「3D部品」として分解され、住宅全体を3Dモデルとして作成し直すこともできる。クラウドシステムが自動集計した見積書と同時に住宅の3Dモデルも送られてきて、建物の外観や内観を3Dで見たり、パースをつくったりすることも可能だ。

Jw_cadの図面からクラウドで作られた3Dモデルの外観(資料:K-engine)
Jw_cadの図面からクラウドで作られた3Dモデルの外観(資料:K-engine)

視点を変えると内観のパースが見られる(資料:K-engine)
視点を変えると内観のパースが見られる(資料:K-engine)

 これらの機能を実現するエンジンは、福井コンピュータアーキテクトの3D住宅設計システム「Architrend-Z」のものが採用されている。そのため、Jw_cadの図面のほかArchitrend-Zの図面データでも見積もりなどが可能だ。

 K-engineサービスのクラウドサーバーには、LIXILグループ以外の各社製品も含む約300万点の建材・設備データの3Dモデルや標準価格などが登録されている。ユーザーはこのシステムを使う前に、自社の標準仕様としてよく使う建材設備を選び、仕入れ時の掛け率や利益率を登録しておく。

 すると施工時の原価管理に使う実行予算書や、施主に提出する見積書が自動作成される仕組みだ。標準仕様と異なる部分だけ別途入力すればよい。

 仮設工事の内訳には、その都度入力しなくても「仮設トイレ」や「養生ネット」「外部足場」などの数量や見積価格も自動計算され、見積書などに反映される。

標準仕様からの変更点などを入力する画面(資料:K-engine)
標準仕様からの変更点などを入力する画面(資料:K-engine)

見積書の内訳。しっかりした金額の積み上げがあるので正確な見積もりが可能だ(資料:K-engine)
見積書の内訳。しっかりした金額の積み上げがあるので正確な見積もりが可能だ(資料:K-engine)

仮設工事の内訳。仮設トイレや足場の数量も自動計算されている(資料:K-engine)
仮設工事の内訳。仮設トイレや足場の数量も自動計算されている(資料:K-engine)

 さらに驚くべきことは、カレンダーや工務店の休日などを反映して、工程表まで自動作成してくれるのだ。

自動作成された工程表(資料:K-engine)
自動作成された工程表(資料:K-engine)

 レイヤーに部材を描き分けたり、クラウドサーバーに設定したりと若干のルールはあるが、設計者が長年親しんできたJw_cadの図面ファイルを使って、BIMソフトのように4D(3D+工程計画)、5D(4D+コスト計画)までこなせる機能は画期的と言えそうだ。

 「K-engineサービス」は、これまでLIXILが30数億円の費用と3年の歳月をかけて開発した。LIXILはこのサービスを建設業界のプラットフォームとして普及させるため、別会社を立ち上げ、次世代産業の育成を行う産業革新機構から約20億円の出資を受けた。

 10月には「K-engineプラットフォーム・オープン協議会」(仮称)の準備会も発足させ、建材・設備のデータなどのコンテンツを提供する企業や、BIMソフトを開発する企業などと協力しながら、K-engineを普及させていく計画だ。

 K-engineサービスの利用料は会社の規模やサービス内容によって毎月5000円(税別)~5万円(同)となっている

9月8日に東京で行われた記者会見での握手。左から産業革新機構専務取締役の朝倉陽保氏、K-engine代表取締役社長の喜久川政樹氏、LIXIL代表取締役社長 兼 CEOの藤森義明氏(写真:家入龍太)
9月8日に東京で行われた記者会見での握手。左から産業革新機構専務取締役の朝倉陽保氏、K-engine代表取締役社長の喜久川政樹氏、LIXIL代表取締役社長 兼 CEOの藤森義明氏(写真:家入龍太)

 日本でこれだけ本格的な見積もり用のクラウドシステムができたのは、素晴らしいことだと筆者は考える。将来はBIMソフトとの連携も可能になりそうなので、住宅の見積もり作業はより正確かつスピーディーになり、坪単価といったどんぶり勘定的な見積もりは次第に姿を消していきそうだ。