2D図面をもとに3Dによる干渉チェック:スタッド配置図3D照査機能(オフィスケイワン)
橋梁の中でも合成床版を使ったタイプは、鋼製の橋桁と鉄筋コンクリート製の床版が接続する部分が非常に複雑な構造となっている。
橋桁とコンクリート床版を一体構造とするため、橋桁の上には「スタッド」というボルトのような鋼棒が狭い間隔で溶接されており、これと交差するように床版の横リブとなるT形鋼などが狭い間隔で取り付けられる。
橋桁同士が連結する部分では、これに高力ボルトと添接板も加わるほか、主桁架設時には仮設の金具類やコンクリート打設厚さをチェックする検測棒用のナットなども溶接されているので、想像以上に部材が交錯することになる。
橋の図面は鉛直方向から見た投影図で描く。このとき、橋に縦断勾配が付いていると、投影面で作図した図面と、橋桁を展開図に変換したときに勾配分の微妙な差が出てくる。こうした場合に部材同士の干渉を防ぐためは、コンマ1mmの精度で3次元的な検討が必要と言っても過言ではない。
そこで大阪市西区の橋梁設計会社、オフィスケイワンは、干渉問題が発生しやすい2Dのスタッド配置図を1クリックで3Dモデル化し、干渉チェックが行える「スタッド配置図3D照査機能」を自社開発した。
これは3Dモデルが扱えるAutoCADのレギュラー版をカスタマイズして作った機能だ。通常、2Dの情報しか持っていない図面上に描かれた図形から、スタッドや高力ボルト、リブがそれぞれ3Dモデルとして立ち上がる様子は不思議な光景だ。
オフィスケイワンの保田敬一代表取締役は「2D図面を描くときにそれぞれの部材をレイヤーに分けておく。そして事前にプログラムに特定の図形を登録しておくと、高さ付きの3Dモデルに変換される仕組みになっている」と語る。
例えば、直径25mmの円は「高さ200mm直径22mの3Dスタッド」に変換、直径22mmの円は「高力ボルトM22の3Dに変換」、レイヤー名「RIB_L」の線分は「左向きリブを100mmZ方向に3D変換」、といった具合だ。2D図面から3Dモデルへの変換は数秒~1分程度で完了する。
「平面図を描くときにこれらの約束ごとを守っていれば、自動的に3D変換できるので設計者の負担はあまり増えない」と保田代表取締役は説明する。
こうして作られた3Dモデルは、BIMやCIMのモデルデータを複数、読み込み、合体させた状態でいろいろな角度から見られるビューワーソフト「Navisworks」に標準で付属している干渉チェック機能で、部材同士の干渉部分がないかどうかを確認できる。
スタッドが1本、干渉していただけでも施工時には手戻りが発生することになる。既存の2D図面を利用して3Dでの干渉チェックができるようになると、BIMやCIMを導入していない現場でも施工時の問題点を事前に解決しておく「フロントローディング」が行いやすくなりそうだ。