2014年のAIA(米国建築家協会)のBIMアワードで、優秀建築賞を受けたアナハイム地域交通インターモーダルセンターは、巨大なアーチで構成された透明感あふれる建物だ。全体が曲面で覆われたこの建物は、意匠設計や構造、エネルギーの解析、部材製作、そして施工まで、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が全面的に導入され、現在、工事が進んでいる。

 米国・ロサンゼルス近郊のアナハイムには、ディズニーランドやメジャーリーグのエンゼルス・スタジアム、屋内競技場のホンダセンターといったスポーツ、レジャー施設があり、年間2000万人が訪れる。アナハイムを含むカリフォルニア州オレンジ郡全体の年間来訪者数は、4000万人を超える。

 建設中のアナハイム地域交通インターモーダルセンター(Anaheim Regional Transportation Intermodal Center。以下、ARTIC)は、高速道路や幹線道路と鉄道、バス、タクシー、そして歩行者用道路や自転車用道路といった10種類の交通手段を接続する一大交通拠点となる。

意匠性と環境配慮を両立、LEEDプラチナを目指す

 アナハイム地域交通インターモーダルセンターの約6万5000m2の敷地には、6313m2のセンター建物のほか、1082台収容の駐車場が併設される。総工費は約18億8000万円だ。

アナハイム地域交通インターモーダルセンターの完成予想図(資料:AIA TAP委員会)
アナハイム地域交通インターモーダルセンターの完成予想図(資料:AIA TAP委員会)

巨大なアーチ部材で覆われた内部の完成予想図(資料:AIA TAP委員会)
巨大なアーチ部材で覆われた内部の完成予想図(資料:AIA TAP委員会)

ARTIC全体のBIMモデル(資料:AIA TAP委員会)
ARTIC全体のBIMモデル(資料:AIA TAP委員会)

 回転体の一部を切り出すようにデザインされた外観を持つこの建物は、意匠設計はもちろん、各部材の詳細設計、そして施工までBIMの活用が不可欠だった。また、一枚ごとに微妙に形が違う外装材の製作にはCNC(コンピューター数値制御)加工機が使われた。

 そして換気や照明、エネルギー解析にもBIMモデルを元にしたシミュレーションを行い、米国のグリーンビルディング認証システム「LEED」の最高クラスである「プラチナ」の取得を目指している。各段階での様々なBIM活用を見てみよう。

受賞者を代表し、AIA2014でARTICのプロジェクトについて講演するビューロー・ハポールド(Buro Happold)社のカート・コムラウス(Kurt Komraus)氏(写真:家入龍太)
受賞者を代表し、AIA2014でARTICのプロジェクトについて講演するビューロー・ハポールド(Buro Happold)社のカート・コムラウス(Kurt Komraus)氏(写真:家入龍太)