日本から持ち込んだトータルステーション
翌6月25日は、大阪府箕面市の測量会社、関西工事測量がトータルステーションを使ったコンクリートのひび割れ計測システム「KUMONOS」について発表した。
ひび割れ幅の読み取りに使う「クラックスケール」をトータルステーションに内蔵させることにより、コンクリート壁から離れたところからひび割れ幅と形状を計測し、パソコン上に自動描画するというシステムだ。
この発表にも、熱意が感じられた。わずか10分程度の短い発表時間にもかかわらず、重いトータルステーションと三脚をわざわざ日本から会場に持ち込み、壁に張ったひび割れを模した紙を実際に読み取るデモを行ったのだ。
また、受講者のイスには一つ一つ、資料が配られていた。これまでAIA(アメリカ建築家協会)の全米大会や、ASCE(米国土木学会)などが開催する会議など、10以上の国際イベントに参加したが、これほど入念な準備を行った発表者は珍しい。日本発の「KUMONOSU」を海外に売り込みたいという熱意の表れだろう。
発表前の休憩時間から会場に三脚とトータルステーションを設置し、各座席にKUMONOSの資料を配るなど、準備にも余念がなかった。
発表後にはすかさず聴講席から英語で質問が飛んできた。英語にハンディキャップのある人が多い日本人にとっては脅威とも言える時間だ。
中庭氏が質問内容の理解に戸惑っているとき、さっと立ち上がり、助け船を出したのが共同研究者でもある大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻の矢吹信喜教授だった。質問の内容は、ひび割れの深さが分かるのかということだった。これに対し、矢吹教授はひび割れの深さまでは分からないということを端的に回答した。