オートデスクが3Dプリンター事業に参入
これまで述べてきたように、3Dプリンターでモノをつくるのはなかなか難しく、もととなる3Dデータの作成や調整などで手間取ることが多々ある。
この状況を改善しようと、5月15日、米国オートデスクは独自の3Dプリンターと、3Dプリンター用の新しいプラットフォーム「Spark」を開発。2014年下期に提供を開始すると発表した。「Spark」は、3Dプリンターを使うとき、実際にどのようにプリントされるのかを簡単な操作で調整し、確実に造形できる機能を提供するものだ。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)など3Dソフトウエアの大手ベンダーである同社が、3Dプリンターというハードウエアを発売するというニュースだけでも驚きに値する。
それだけでなくオートデスクは、「Spark」のライセンスを無料で利用できるようにし、ハードウエアメーカーと協力して、プラットフォームの採用を働きかけるという。
また、3Dプリンターの設計情報を無料で公開し、他のベンダーや研究機関が開発や研究に使えるようにする。造形材料もオートデスクだけでなく他社が提供する様々な材料を利用できるようにするというのだ。
今回の発表には、3Dプリンターを普及させることにより3Dソフトの市場を広げていこうというオートデスクの戦略が感じられる。最近、3Dプリンターの低価格化が進んでいるのは、3Dプリンターの基本的な特許が続々と切れたことを受けて、「RepRap」という3Dプリンターのオープンソース規格が大きく影響している。オートデスクのSparkがうたい文句通りに使いやすいとなると、RepRapの強力なライバルになりそうだ。
3Dプリンターはもともと製造業向けに開発された機械なので、データ形式や模型の形などの違いにより、建設分野では使いにくい面が多かった。BIMやCIMなどのソフトの大手であるオートデスクが、3Dプリンター事業に乗り出したことで、建設分野にとってどれだけ3Dプリンターが使いやすくなるのか、注目したい。