BIMと連動して吊り荷の行き先をiPad上に表示、清水建設

 ビル工事現場にそびえ立つタワークレーンは、ビルの各部分に工事用資材を送り届ける主役級の建機だ。吊り上げた資材の内容と吊り上げ・つり下ろし位置、その時間の情報は、ビル工事の進ちょくデータそのものと言っても過言ではない。

 ここに着目した清水建設は、IHI運搬機械とエスシー・マシーナリと共同で新型タワークレーン「スマートクレーン」を開発した。クレーンの揚重作業の状況を、建物のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルと連動させて進ちょく状況などの施工管理を行えるようにしたのが特徴だ。神奈川県内で同社が施工中の大型タワーマンションの現場に2基を導入している。

神奈川県内のマンション建設現場に導入された「スマートクレーン」(写真:清水建設)
神奈川県内のマンション建設現場に導入された「スマートクレーン」(写真:清水建設)

 クレーンの運転席にはパソコンやモニターが装備され、吊り上げワイヤの巻き上げ・巻き下げ量やジブの角度、クレーンの旋回角度を検出できるセンサーのデータを集約サーバーに送信して、リアルタイムに部材を吊り上げるフックの位置が計算できるようになっている。

 フックに資材の荷重がかかるとサーバー上のプログラムが揚重作業開始と判断して吊り上げ位置を特定。資材がビル上の取り付け位置に届いてフックの荷重が解放されるとその位置を特定する、という仕組みだ。同時にそれぞれの時刻も記録される。

 これらの情報はBIMモデルと連動させて、出来高を3Dで見える化したり、計画と実績を3Dで比較したりすることができる。

 このシステムを現場最前線で運用するのに使われているのがiPadだ。部材をクレーンのワイヤ先端のフックにかける玉掛け作業員がiPad上で部材番号にタッチすれば、その部材をどこに運ぶのかという情報が、クレーン運転室のモニターや部材の取り付け作業員のタブレット上の図面に表示される。

タワークレーンの運転室内のモニター。上からジブ先端カメラ用モニター、集約計器、運転室モニター(写真:清水建設)
タワークレーンの運転室内のモニター。上からジブ先端カメラ用モニター、集約計器、運転室モニター(写真:清水建設)

 資材を吊り上げるクレーンのフックには、無線LANやカメラ、スピーカーやマイク、LED照明、バッテリーなどを備えた「多機能フック」を採用した。クレーン休止時にフックを巻き上げてジブに接近させると、独自開発の非接触充電システムによって自動的に充電できるようになっている。

多機能フックに搭載された様々な機器。幅1,594mm×厚さ635mm×高さ4,380mmの大きさで、重量は1.2t(写真:清水建設)
多機能フックに搭載された様々な機器。幅1,594mm×厚さ635mm×高さ4,380mmの大きさで、重量は1.2t(写真:清水建設)

 クレーンのベースマシンは、500mtの機械的性能をもつ国内最高水準のものを採用した。従来の揚重作業に比べて作業効率が20~30%程度向上し、高さ100mクラスのビルなら工期を約1カ月も短縮できる見込みだ。