パリやフィレンツェなどの観光地の建物の改修工事現場では、建物のファサードそっくりに印刷されたシートで足場の外側が覆われていることがある。街並みの雰囲気を壊さずに工事を進める現場の“おしゃれ足場”は、パソコンと大判プリンターを使えば意外と簡単にできそうだ。

 欧州の観光地は、歴史的な街並みそのものが観光資源だ。築後、数百年の建物を丁寧に補修しながら現在も使い続けている。

 こうした観光地では、意外と多くの工事現場があり、タワークレーンを見かけることも珍しくない。例えば今年の1月に訪れたパリのヴァンドーム広場では、広場に面する2カ所で結構大がかりな改修工事が行われていた。しかし、工事現場の存在に気づく観光客はあまり多くなかったようだ。

 その理由は、工事中の建物を囲む足場が、ファサードそっくりの模様を描いたカバーで覆われていたためだ。工事現場は街並みの中に溶け込み、見事にカムフラージュされていた。

 それだけではない。この現場の工事用車両の出入り口は、普段は閉じておき、車両が出入りする瞬間だけ開けていた。工事現場の存在を極力、観光客に意識させないための徹底した配慮だ。

 そのほか、ノートルダム寺院前の広場に面した警視庁の補修工事や、オペラ座近くの古い商業ビルでもファサードを印刷した足場シートが使われていた。

パリのヴァンドーム広場に面した建物の大規模改築工事。現場事務所と思われるプレハブの色も足場カバーに合わせてあり、大工事の割には工事現場の存在をあまり感じさせない(写真:家入龍太)
パリのヴァンドーム広場に面した建物の大規模改築工事。現場事務所と思われるプレハブの色も足場カバーに合わせてあり、大工事の割には工事現場の存在をあまり感じさせない(写真:家入龍太)

左下のトビラは車両の出入り口。トラックが入った後、素早く閉じられた(写真:家入龍太)
左下のトビラは車両の出入り口。トラックが入った後、素早く閉じられた(写真:家入龍太)

セーヌ川の中州であるシテ島では、ノートルダム寺院前の広場に面したパリ警視庁の建物の改修工事現場で“おしゃれ足場”を発見した(写真:家入龍太)
セーヌ川の中州であるシテ島では、ノートルダム寺院前の広場に面したパリ警視庁の建物の改修工事現場で“おしゃれ足場”を発見した(写真:家入龍太)