建設業のイメージアップにも絶好の機会

 1990年の談合事件や耐震構造偽装事件などで、建設業を見る世間の目は厳しい。新国立競技場の設計・建設の現場で、BIMやCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)という新しいツールを使って仕事をしているプロセスをアピールできれば、建設業界にとってもイメージアップにつながるのではないだろうか。

 “日本のBIM元年”とよばれた2009年から既に5年がたった。その間、日本のBIM活用力は実際の建物の建設によって実力が培われてきた。建設業に身を置く人も、仮想BIMコンペの制限時間である48時間であれだけの設計やシミュレーションが行えたことに驚いたことだろう。

 ましてや、一般の人はいまだに建設業を遅れた産業と見ている。新国立競技場の問題に国民の目が集まっている今、BIMやCIMの力によってスピーディーに問題解決を図る、新しい建設業の姿をPRする絶好の機会となるはずだ。

 新国立競技場の問題を解決する上で、短期集中によるBIM/CIMの活用による事態の打開を提案したい。これから5年後までに、日本のオリンピックを象徴する高品質な新国立競技場を予定通りの工期とコストで、安全面や環境面を満足させて完成させることができるかどうかは、 “日本のBIM力”が試される正念場となるのではないだろうか。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。