ICTブルドーザー:最大限の掘削力を発揮できるブルドーザー

 盛り土や切り土を3次元の設計データに基づいて施工する3次元マシンコントロール付きのブルドーザーはこれまで、掘削作業はブルドーザーの能力を最大限に生かすことが難しかった。

 地盤の硬さや押し土量などをブルドーザーの能力内に抑えながら少しずつ施工するため、施工用のデータを安全側に設定する必要があったのだ。

 こうした掘削時の問題を解決するため、コマツはトプコンと共同で世界初の全自動ブレード制御機能を搭載した中型ICTブルドーザー「D61PXi-23」を開発し、6月から北米や欧州の市場に投入した。そして9月には日本でもレンタルが始まった。

日本市場にも投入された中型ICTブルドーザー「D61PXi-23」(写真:コマツ)
日本市場にも投入された中型ICTブルドーザー「D61PXi-23」(写真:コマツ)

 このブルドーザーの特徴は、押し土できる最大土量に応じて、ブレードを自動的に上げ下げできる機能が付いていることだ。

 仕上げ面の3D形状を決めておけば、ブルドーザーは最大能力を発揮して掘削を行い、最後に微修正して仕上げる。

粗掘削時は最大土量で掘削し(左)、仕上げ施工時には少しずつ高低を調整する(右)(資料:コマツ)
粗掘削時は最大土量で掘削し(左)、仕上げ施工時には少しずつ高低を調整する(右)(資料:コマツ)

ICTブルドーザーの機器構成(資料:コマツ)
ICTブルドーザーの機器構成(資料:コマツ)

3Dマシンコントロールを活用しながら最大限の掘削力が発揮できる(写真:コマツ)
3Dマシンコントロールを活用しながら最大限の掘削力が発揮できる(写真:コマツ)

 コマツはまず、情報化施工に必要な人工衛星の電波で位置計測を行う「GNSS技術」やICT機器管理のノウハウを習得しているコマツグループのレンタル会社やコマツレンタルから、レンタル車として提供を開始する。

 コマツグループの情報化施工のノウハウとともにユーザーに活用してもらうことで、現場へのスムーズな導入を支援していくとのことだ。

 土木分野では国土交通省がCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の導入を積極的に進めており、土工分野でも今後、設計の3D化が進むことが期待される。すると情報化施工や出来形管理用の3Dデータの作成も楽になるので、ICTブルドーザーも使いやすくなりそうだ。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。