3Dレーザースキャナー:山岳トンネル内の変位計測を自動化

 山岳トンネルは掘削後に壁面がじわじわと変形することがよくある。人間の目にはとても見えない微妙な動きなので、機器による観測が欠かせない。

 これまでは10~30m間隔で測定用の断面を設け、1断面当たり3~5カ所の測点にターゲットを設置して、光波測定器で変位を監視する方法が一般的だった。しかし、この方法では測点以外の変位が把握できない。

 そこで鹿島は「3Dマッチ」(商標登録出願中)という3Dレーザースキャナーを使ったトンネル内面の変位計測技術を開発した。

 3Dレーザースキャナーでトンネル内壁の3D形状を計測し、過去の計測データと比較することで、トンネル内全体の変位を「見える化」できる。

「3Dマッチ」で見える化した、トンネル内壁の変位。赤い部分が変位の大きなところ(資料:鹿島)
「3Dマッチ」で見える化した、トンネル内壁の変位。赤い部分が変位の大きなところ(資料:鹿島)

掘削後、48時間たったトンネル切り羽の奥行き方向変位(資料:鹿島)
掘削後、48時間たったトンネル切り羽の奥行き方向変位(資料:鹿島)

従来の計測方法(上)と「3Dマッチ」(下)の比較。従来は測定点の動きしか分からなかったが、「3Dマッチ」なら内壁全体の変位を面的に管理できる(資料:鹿島)
従来の計測方法(上)と「3Dマッチ」(下)の比較。従来は測定点の動きしか分からなかったが、「3Dマッチ」なら内壁全体の変位を面的に管理できる(資料:鹿島)

測定に使う3Dレーザースキャナー(左)と測定器の全景(右)(写真:鹿島)
測定に使う3Dレーザースキャナー(左)と測定器の全景(右)(写真:鹿島)

 ここで問題なのが、過去の計測データとの比較方法だ。3Dレーザースキャナーはレーザー光線をショットガンのようにトンネル壁面に照射し、無数の点の3D座標を「点群」として計測する仕組みだが、計測した点の位置はバラバラなので個々の点を単純に比較することはできない。

 そこで使ったのは、「テンプレートマッチング」という画像処理によるパターン認識技術だ。今回は、点群データを解析し、吹きつけコンクリートでできた微妙な凹凸パターンから、2つの点群データの対応する場所を探し出す。こうして任意の壁面上の位置で、どう変位したのかを自動的に比較することが可能になった。

 テンプレートマッチングは、防犯やセキュリティー分野で人物特定など様々な分野に使われている。今回の吹きつけコンクリートでできた不規則な壁面形状が、防犯での活用時は人の顔に相当する。画像の中から特定のパターンを検出しマッチングさせ、同じ部分を探し出すのに使うというわけだ。

 鹿島がこの計測システムを実際のトンネル工事で使用し、3Dマッチと従来の光波測定器の結果を照合したところ、よく一致していたという。

吹きつけコンクリート面にテンプレートマッチングを応用し任意点の変位を追跡する(写真:鹿島)
吹きつけコンクリート面にテンプレートマッチングを応用し任意点の変位を追跡する(写真:鹿島)