バーチャルリアリティー(VR):工事の仮設計画をドライバー目線で解説

 ソフトベンダーのフォーラムエイトは毎年、「3D・VRシミュレーションコンテスト オン・クラウド」というコンテストを開催している。同社製品のバーチャルリアリティー(VR)ソフト「UC-win/Road」を使った作品を競うもので、早くも12回目を迎えた。

 エントリーされた作品は、ウェブ上での一般投票と審査委員会による投票で評価される。今年、最優秀の「グランプリ」に輝いたのは、測量機器の販売・レンタルを手がける岩崎(本社:札幌市)企画調査部が作成した「夜間工事におけるVR交通規制シミュレーション」という作品だった。

 北海道の十勝大橋の補修工事で交差点周辺の交通規制計画をVRでシミュレーションしたものだ。

 特徴はドライバー目線での現場周辺の見え方や、運転感覚をVRで検証夜したことだ。夜間の視認性や吹雪になったときのクルマからの工事看板や誘導員の見え方などを、リアルに再現した。

 また、規制の有無による交通渋滞の違いもシミュレーションし、その必要性を誰もが分かるように表現した。

グランプリを獲得した岩崎 企画調査部による十勝大橋の交通規制シミュレーション(資料:岩崎)
グランプリを獲得した岩崎 企画調査部による十勝大橋の交通規制シミュレーション(資料:岩崎)

夜間の現場の見え方。仮設照明や交通誘導員の姿も見える(資料:岩崎)
夜間の現場の見え方。仮設照明や交通誘導員の姿も見える(資料:岩崎)

吹雪のときのドライバーからの見え方(資料:岩崎)
吹雪のときのドライバーからの見え方(資料:岩崎)

 また、準グランプリ優秀賞には、パシフィックコンサルタンツの「津波・避難解析結果を用いたVRシミュレーション」が選ばれた。

 津波避難ビルや盛り土道路など、津波対策を施した町と従来の町で、人々の避難の様子をVRでシミュレーションしたものだ。

 対策を施さず、クルマを使って避難した場合には渋滞があちこちで発生し、避難のスピードも遅くなる様子や、津波の広がり範囲や津波避難ビルの効果などがリアルに表現されている。

津波・避難解析結果を用いたVRシミュレーション(資料:パシフィックコンサルタンツ)
津波・避難解析結果を用いたVRシミュレーション(資料:パシフィックコンサルタンツ)

対策なし(左)と対策あり(右)による津波の広がる範囲や避難時間の比較(資料:パシフィックコンサルタンツ)
対策なし(左)と対策あり(右)による津波の広がる範囲や避難時間の比較(資料:パシフィックコンサルタンツ)

 このほかの入賞作品も、施工現場などをリアルに再現したものがあった。「エッセンス賞」を受賞した大阪大学大学院の「大阪地下街VRデータ」は、大阪駅の南側にある地上・地下約300m四方をVR化したものだが、地下街には起伏が多いことが、このVRには表現されていた。

微妙な起伏まで忠実に表現された「大阪地下街VRデータ」
微妙な起伏まで忠実に表現された「大阪地下街VRデータ」

 避難計画を立てるときに、起伏を考慮しておかないと、予想以上に避難時間がかかったり、浸水に巻き込まれたりすることもある。

 このほか、「審査員特別賞 エンジニアリング賞」を受賞したノダエンジニアリングの作品、「鉄道桁単線区間における架設工法の提案」は、狭い現場で橋桁を架設する手順を、VRで分かりやすく説明した。

「審査員特別賞 エンジニアリング賞」を受賞した、鉄道桁単線区間における架設工法の提案(資料:ノダエンジニアリング)
「審査員特別賞 エンジニアリング賞」を受賞した、鉄道桁単線区間における架設工法の提案(資料:ノダエンジニアリング)