活用例2 
コンクリート橋の架設現場――施工、仮設のシミュレーションで手戻り防止

 神奈川県相模原市緑区で施工中のさがみ縦貫相模川橋上部工事の現場では、橋桁の配筋をCIMソフトでモデル化し、施工手順の検討を行った。2013年度の道路橋示方書の改訂を受けて、示方書に従って行った配筋設計が実際に施工できるかどうかを確認するためだ。

相模川橋のCIMモデル全景(資料:大林組)
相模川橋のCIMモデル全景(資料:大林組)

 「桁全体ではなく、あえて鉄筋が過密になっている桁の端部だけをCIMモデル化した」と、杉浦氏は語る。問題の少ない部分まで鉄筋を含めたCIMモデルを作ると大変な時間と労力がかかる割に、得られる効果は少ない。そこで「選択と集中」によるCIM活用を行ったわけだ。

 複雑に入り組んだ鉄筋は、これまでのように現場対応だけでは解決できないことがある。事前の施工シミュレーションでチェックしておくことにより、作業の手戻り防止につながるのだ。

 このほか、橋桁の「上げ越し、下げ越し」の管理にもCIMモデルを使った。橋桁の架設中は橋桁の応力状態が完成後と異なるため、架設段階ごとに桁の高さを完成時より上げたり下げたりする必要がある。

 それを構造解析ソフトで計算しておき、施工時に確認のために使う。しかし、施工段階全体の上げ越し、下げ越しのデータ量はため、A1判用紙を長手方向に延長した「長尺」でプリントアウトするくらいだという。

 そこで、前出の見草トンネルで使った属性情報だけを取り出して入力する方法を使い、上げ越し、下げ越しの計算データを属性情報として「Navis+」によってCIMモデルにインプット。そして施工中は実測データも随時、CIMモデルにインプットすることで、計算値との誤差などを色分けしてCIMモデルに表示できるようにした。

過密配筋部分のみをCIMモデル化して施工性を検討したり、上げ越し、下げ越しを色分けして施工管理に使ったりしている(資料:大林組)
過密配筋部分のみをCIMモデル化して施工性を検討したり、上げ越し、下げ越しを色分けして施工管理に使ったりしている(資料:大林組)

 この現場でのCIM活用は、枠組み足場の数量計算の省力化や正確化にも役立っている。「橋梁本体のCIMモデルを足場のレンタル会社に貸すと、そのモデルを使ってRevit Structureという構造設計用のBIMソフトで足場を設計し、枠組み足場の数量を正確に拾い出してくれる」と杉浦氏は語る。

 足場をCIMモデル化することにより、安全通路の確保などのチェックや、細かい部材が不足していないかなどのチェックが容易に行える。これは作業の安全確保や材料手配のための手待ち時間のほか、取引先の業務効率化にもつながっているようだ。