大林組は全国15カ所の現場で、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を自主的に導入した。その合言葉は「Simple & Easy」。3Dモデルの作成と属性情報の管理を分けるなどの方法で、現場の技術者がCIMのメリットを感じられる活用を目指している。

 大林組が土木部門でCIMの導入を始めたのは2012年の3月。まだ「CIM」という呼び方もあまり聞かれないころだった。

 以来、同社は施工業務でどこまでCIMを活用し、効果を上げられるのかを検証するため、トンネルや橋梁、造成、メガソーラー発電所など様々な工種の現場でCIMを導入。現在では15カ所にも上っている。

 社内でCIM推進を担っているのが、同社土木本部本部長室 情報企画課課長の杉浦伸哉氏だ。「初めは右も左も分からず、現場にもなかなか受け入れてもらえなかった」と杉浦氏は苦労を語る。土木構造物は工種ごとに構造や施工管理で求められる内容も違う。そのため建築分野のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用方法も当てはまりにくい。

 そこで、当初の「CIMで何ができるか」といったCIM中心の考え方から、「CIMで何を解決できるか」といった現場業務中心の考え方に変えることにした。現場の人にもCIMの便利さが理解してもらえるようになったのはそれからだ。

 大林組のCIM活用の特徴は、発注者とは独立した現場での取り組みに絞っていることだ。工事をスムーズに行うことで経済的な工期を実現し、手戻りなどの追加コストを防ぐといった活用法だ。杉浦氏は「判断の迅速化、施工の効率化、工期短縮とコスト削減という3つのことに絞ってCIM活用を行っている。今はこれ以外のことはやらない」とさえ語る。現場でのCIM活用の“極意”をいくつかの現場での活用を例に紹介しよう。

施工管理用のiPadを手にする杉浦伸哉氏(写真:家入龍太)
施工管理用のiPadを手にする杉浦伸哉氏(写真:家入龍太)