AIAのBIMアワードでも今年、FM部門が初受賞

 AIA(アメリカ建築家協会)全米大会の恒例行事となっている第9回BIMアワードの授賞式が今年6月19日(米国時間)、米国デンバーで開催された。

 今回、異例とも言えるのは、FM部門で初の受賞者が出たことだ。FM部門の「新築賞」にはオーストラリア・シドニーの「1 Bligh Street」ビル(受賞者:Architectus + ingehoven architects)が、「改修賞」には「Edith Green-Wendell Wyatt Federal Building」(受賞者:SERA Architects、General Services Administration)がそれぞれ選ばれた。

FM部門の新築賞に選ばれた「1 Bligh Street」ビル(資料:AIA、写真:家入龍太)
FM部門の新築賞に選ばれた「1 Bligh Street」ビル(資料:AIA、写真:家入龍太)

「1 Bligh Street」ビルの自然換気システム(左)と建物内部の空調シャフト(右)(資料:AIA、写真:家入龍太)
「1 Bligh Street」ビルの自然換気システム(左)と建物内部の空調シャフト(右)(資料:AIA、写真:家入龍太)

FM部門の改修賞に選ばれた「Edith Green-Wendell Wyatt Federal Building」ビル(資料:AIA、写真:家入龍太)
FM部門の改修賞に選ばれた「Edith Green-Wendell Wyatt Federal Building」ビル(資料:AIA、写真:家入龍太)

「Edith Green-Wendell Wyatt Federal Building」ビルの改築で行われたシミュレーション(左)。省エネ型のファサード(右)(資料:AIA、写真:家入龍太)
「Edith Green-Wendell Wyatt Federal Building」ビルの改築で行われたシミュレーション(左)。省エネ型のファサード(右)(資料:AIA、写真:家入龍太)

受賞者を発表する司会者のスティーブ・ハーガン氏と審査委員長のRK・スチュワート氏(左写真)。ドリンクを片手に発表を聞く参加者(写真:家入龍太)
受賞者を発表する司会者のスティーブ・ハーガン氏と審査委員長のRK・スチュワート氏(左写真)。ドリンクを片手に発表を聞く参加者(写真:家入龍太)

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 建物のライフサイクルコストのうち、竣工までのコストは2~3割にすぎず、残りの7~8割は完成後の運用段階で発生するコストと言われている。

 これまで、ブラックボックスだった運用段階のコストをBIMと連動したFMのシステムで「見える化」し、コンピューターの力によって解析やシミュレーションを行うことができるようになる。するとコストの構造や削減すべきポイントが明らかになり、巨大な運用コストを削減することができる。

 建設業もFMのシステムを駆使し、運用段階のコスト削減を図るサービスに関わることによって、プロジェクトの受注活動に追い回される「狩猟型ビジネス」から、毎年、安定的な収入を得られる「農耕型ビジネス」へとビジネス領域を広げられる可能性がある。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。