BIMとFMが連携したクラウドシステム

 CAFMソフトウエアを開発・発売するヴィントコン社(vintoCON、本社:ハンガリー・ブダペスト)と日本代理店のシェルパ(本社:名古屋市)は、2013年3月にBIMソフト「ArchiCAD」と連係したクラウドベースのFMシステム「archifm.net(アーキエフエム・ドット・ネット)」の日本語版を発売した。

 ArchiCADで作成したBIMモデル内の部材や家具などを、クラウド上のFM用データベースに入力された維持管理情報とひも付けて、視覚的に分かりやすいFM業務を行えるようにするシステムだ。また、BIMモデルがないものでも、同じデータベース上で管理できる柔軟さも持ち合わせている。

建物のBIMモデル(上)と連携するarchifm.net(下)(資料:シェルパ)
建物のBIMモデル(上)と連携するarchifm.net(下)(資料:シェルパ)

 日本ではこの製品のユーザーはわずかだが、欧米では多くのユーザーがこのシステムを活用している。

 「欧州では、このシステムを使って固定費削減し、利益向上に貢献している企業がたくさんある」と語るのは、同社ビジネス開発担当責任者のアンドラス・シゲッティ(Andras SZIGETI)氏だ。

来日したハンガリー・ヴィントコン社のアンドラス・シゲッティ氏(右端)と多田真理子氏(中央)。左端は日本代理店、シェルパの高松稔一代表取締役(写真:家入龍太)
来日したハンガリー・ヴィントコン社のアンドラス・シゲッティ氏(右端)と多田真理子氏(中央)。左端は日本代理店、シェルパの高松稔一代表取締役(写真:家入龍太)

 アンドラス氏によると、管理するビルをarchiFMで分析し、必要度に応じて売却や賃貸の中止、もしくはエネルギー改修などの投資といった判断を行ったところ20%ものコスト削減を実現した会社もあるという。

 「archiFMやarchifm.netで管理する対象物は、オフィス家具や備品などから、建物内部の配管設備まで幅広い」とアンドラス氏は語る。

 archiFMは企業経営用の基幹システム(ERP)やビルエネルギー管理システム(BEMS)などのデータともリアルタイム連携し、管理できる。経営者は、このシステムによって建物の管理費や水道光熱費を「見える化」し、将来の維持管理に必要なキャッシュフローや運用段階でのコスト構造を分析し、先手を打って改善していくことに直接、関われるようになるのだ。

 FMのシステムにデータをインプットして現状を管理することも重要だが、もう一歩進んでこれらのデータをコンピューターで分析したり、解析したりして無駄を見える化し、改善していくことが、FMを利益に貢献させるコツのようだ。

archifm.netのコスト解析機能。建物や設備のコストを解析することにより、無駄な部分を見つけて改善するのがFMシステムで利益に貢献させるコツ(資料:シェルパ)
archifm.netのコスト解析機能。建物や設備のコストを解析することにより、無駄な部分を見つけて改善するのがFMシステムで利益に貢献させるコツ(資料:シェルパ)

定期メンテナンスのコスト計画表(資料:シェルパ)
定期メンテナンスのコスト計画表(資料:シェルパ)

 欧米の銀行や官庁、メーカーなどではこうした例は数多い。日本ではFMでコストダウンを実現したという管理者レベルの話はあるものの、FMを戦略的に活用して利益を目指すという経営者レベルの戦略はあまり耳にしない。

 そこで、シェルパの高松稔一代表取締役は「今年10月後半にも日本でしっかりとしたFMのシステムを立ち上げ、実績を作りたい」と決意を語る。いよいよ、日本でもこれまでコストとして支出していたお金を利益に変える「攻めのFM」による経営戦略の時代が到来するかもしれない。

 経営者がFMの重要性を理解し、その利益を経営戦略として実行してこそ、より大きな効果を発揮する。例えば、経営者レベルでFMに取り組むと、ビルの統合と組織の改変を組み合わせて行うことで、施設と人事双方の効率化による相乗効果で利益を生みやすい企業体質に変えるといったダイナミックな行動につながるからだ。