設計基準をコンピューターに理解させる

 昨年、BIM用の設計チェックソフト「Solibri Model Checker」などが日本でも発売され、BIMソフトで設計した建物が法基準に準拠しているかどうかのチェックを自動化できるようになるとの期待が高まっている。

 ただ、設計基準や法規などを解釈し、ルールとして表現し、ソフトに設定するのは人間が行わなければならない作業だ。

 この作業を省力化できると期待できるのが、イリノイ大学のノラ・エルゴハリー(Nora El-Gohary)助教と、大学院生のジャンソン・ツァン(Jiansong Zhang)氏の研究だ。彼らは自然文で書かれた設計基準をパソコンに読解させるという、画期的な研究を行っているのだ。

 人間が読むために文書化された設計基準を生のままパソコンに読み込ませて、位置関係や寸法、個数などを理解させ、BIMで設計した建物が設計基準に合っているかどうかをチェックするためのルールを自動作成するというものだ。

 現在、96%くらいの“正答率”で解読できるという。この技術が実用化されると、設計チェックのルール作り作業が、かなり省力化できそうだ。

左からイリノイ大学のノラ・エルゴハリー助教と、大学院生のジャンソン・ツァン氏(左)。生の設計基準をパソコンに読解させ、設計チェック用のルールを自動作成する(右)
左からイリノイ大学のノラ・エルゴハリー助教と、大学院生のジャンソン・ツァン氏(左)。生の設計基準をパソコンに読解させ、設計チェック用のルールを自動作成する(右)

アジア系の研究者による発表が目立つも、日本人には出会わず

 今回のIWCCEでは、大学院の学生や若手研究者が多く発表していた。その多くは中国や台湾、韓国などのアジア系学生だ。

 彼らは一生懸命英語で講演し、質疑応答にも堂々と答えていた。一方、日本人の学生が見あたらなかったのは少し残念だった。日本の大学では、BIMや測量など建設業の設計・施工の実務にかかわる教育や研究があまり活発に行われていないのが原因なのだろうか。

 日本には優れた建設技術がある。日本の建設業が今後、国際市場でその実力を発揮していくための第一歩こそが、海外でのPR活動ではないだろうか。海外の学会や業界団体には研究者や業界関係者などの専門家が多く集まり、発表への注目度も高い。若手研究者や大学院生が、日本の建設技術を海外で発表するための支援策なども必要ではないかと痛感した。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。