人体の応力解析により作業の安全性を検証

 建設労働者の災害防止や作業の安全性に関する研究も目立った。面白いのはミシガン大学の研究グループだ。「3D SSPP」というソフトを使って、建設労働者の体をモデル化し、作業時に人体内部に発生する応力を解析することで、危険な作業姿勢を突き止めようという研究を発表した。

 例えば、重いものを持ち上げるときに、前かがみになって持ち上げようとすると腰を痛めるとよく言われる。

 実際、前かがみ(Stoop Lifting)と背筋を伸ばした姿勢(Squat Lifting)でものを持ち上げるときの背骨にかかる圧縮力を比較したところ、前かがみの姿勢の方が応力が大きいという結果が出たという。

 このように、解析によって作業姿勢と人体に対する影響が事前にわかるようになると、施工時や維持管理などでの正しい作業姿勢がとれるような設計や施工方法を採用する「フロントローディング」も実現味が増してくる。

 例えば現在でも、設備分野では建物内部の構造材や設備をBIMモデル化し、そこに人間の等身大モデルを置いて、空間を立ったり、しゃがんだりしながら通り抜けできるかといったシミュレーションを行っている。

 そのときの人体モデルの姿勢をこの応力解析システムで分析することにより、維持管理時に楽な姿勢で点検や補修が行える設計もできるようになりそうだ。

3D SSPPというソフトで人体の応力解析を行ったミシガン大学の研究者(左)。姿勢の違いによる背骨の圧縮力の違い(右)(資料:)
3D SSPPというソフトで人体の応力解析を行ったミシガン大学の研究者(左)。姿勢の違いによる背骨の圧縮力の違い(右)(資料:)

 また、ソウル国立大学の研究者、ビュンジョー・チョイ(Byungjoo Choi)氏は、高所からの墜落や飛来物による負傷など、建設現場でよく起こる労働災害の原因を分析し、データベース化した。

 そして、現場のBIMモデルにこのデータベースを当てはめることで、どこでどんな労働災害が起こりやすいのかを自動的に割り出すシステムを開発したのだ。

 建設現場は、現場ごとに条件が異なるが、このシステムを使うと一発で危険予知ができるそうだ。

ソウル国立大学の研究者、ビュンジョー・チョイさん(左)。BIMモデルから危険予知を自動的に行う(右)(資料:Byungjoo Choi、写真:家入龍太)
ソウル国立大学の研究者、ビュンジョー・チョイさん(左)。BIMモデルから危険予知を自動的に行う(右)(資料:Byungjoo Choi、写真:家入龍太)