米国屈指のハブ空港、デンバー国際空港で行われている拡張工事では、既存のターミナルビルに隣接する鉄道駅やホテルの設計・施工にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)をフル活用している。設計チーム、施工チームとも最新のBIMモデルを共有しながら複雑なプロジェクトを遂行している。

 デンバー国際空港は、敷地面積が米国の空港の中で最も広い。3つの島のように設けられた各ゲートビルと、乗客のチェックインや荷物の受け取りを行うターミナルビルの間には地下鉄が走っている。

 このターミナルビルに隣接してホテルと鉄道駅を新設する。現在、工事の真っ最中だ。行政と民間が連携して事業を進めるPPP(Public Private Partnership)方式で行われ、その規模は総額26億ドル(約2500億円)という大規模プロジェクトだ。

デンバー国際空港の全景(資料:Denver International Airport)
デンバー国際空港の全景(資料:Denver International Airport)

既存ターミナルビルの隣で進む工事(写真:家入龍太)
既存ターミナルビルの隣で進む工事(写真:家入龍太)

ホテルと鉄道駅の完成予想図(資料:Denver International Airport)
ホテルと鉄道駅の完成予想図(資料:Denver International Airport)

ターミナルビルの完成予想図。ホテルが右下に見える(資料:Denver International Airport)
ターミナルビルの完成予想図。ホテルが右下に見える(資料:Denver International Airport)

 このプロジェクトでは、米国オートデスク社がBIMの活用や運用基準を提案したのをきっかけに、ホテルや駅舎などの設計・施工にBIMが幅広く導入された。デンバー国際空港当局がBIMソフト「Revit」用のテンプレート(図面作成のひな形)を作成・管理し、 HNTBやAECOM、ゲンスラーなどからなる設計チームが同じテンプレート使って設計している。

発注者にもBIMマネジャー

 テンプレートは建築の意匠設計、構造設計、設備設計のほか地盤に対応するものが作られている。発注者側にもBIMマネジャーがおり、BIMを活用したワークフローの一員として機能しているのが特徴だ。

 設計チームは空港の南側にある平屋の建物で作業を行い、そのデータを基に「Navisworks」というソフトで意匠、構造、設備のBIMモデルを統合し、検討を行う。その作業を行うのが、「BIMルーム」だ。

 発注者のほか各社のBIMマネジャーがここで顔を合わせて設計内容を検討し、部材の干渉などの問題が発見された場合には、その場で解決策を決めてプロジェクトを進めていく。こうして毎週、BIMモデルが更新され、設計が進んでいく。

BIMルームに集まり、設計検討を行う各社のBIMマネジャー(左)。タッチパネル式のスクリーン(右)(写真:家入龍太)
BIMルームに集まり、設計検討を行う各社のBIMマネジャー(左)。タッチパネル式のスクリーン(右)(写真:家入龍太)